でっきぶらし(News Paper)

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259号(2021年04月)4ページ

「言葉にまつわる動物の はなし~風見鶏を例に~」

 「風見鶏(かざみどり)」という言葉を、読者の皆さんも普段使う事はなくても一度は耳にした事はあると思います。どんな意味なのかよくわからなかったら辞書を引いてみてください。「その時々の情勢に応じて自分にとって有利な側につこうとする人※」。はい。あなたの周りにもいますよね、こういう人。いつでも強い側に付く嫌な・・・失礼。確かに日和見主義的な人を指す、あまり良い意味で使われない事がありますが、もともとは、ヨーロッパなどの教会や住宅の屋根の上に取り付けられたニワトリの形をした風の向きを知る道具のことです。風の方向を知る事と鳥がどういった関係があるのか、今まで気に留めることもなかったのですが、最近、この「風見鶏」という言葉を体現する出来事がありました。

 二月のある日のこと、私はいつものように、フライングメガドームのインカアジサシ(以下、アジサシ。でっきぶらしに何度も登場しているので説明は省略しますね。)に餌のワカサギを空中高く投げていました(投げられたワカサギをアジサシたちは飛びながら空中で咥えるのですが、まず取り損ねる事はありません。私のどんな暴投でもほとんどミスなくキャッチしてくれるので、もしアジサシたちが野球選手だったら、最強守備陣のチームになるなぁ。と、よく想像しながら、方向を変えたり高さを変えたりして、ワカサギを投げるのを楽しんでいます)。その日はとても風が強く、遠くに見える何メートルも伸びた竹が大きくしなる様子がわかるくらいでした。多少風が強いくらいでは高い木の枝に止まり続けるショウジョウトキやクロトキたちも、流石に大きく揺れる枝に止まっていることができない様子で、皆、地上に降りて避難していました(私がこの様子を観察したのは、台風の時くらいなので、この日がどれだけ風が強かったか想像していただけると思います)。そういう悪天候であっても、アジサシたちには餌を与えてあげます。すると、どうでしょう!皆同じ方向を向いて飛んでくるじゃありませんか!風は西から吹いていたので、皆、西に頭を向けています。まさに本物の生きた「風見どり」を目の当たりにしたわけです。よくよく考えれば、当然と言えば当然で、風に背を向けて飛んでいたら、吹き飛ばされてしまいます。また風に向かって飛んでいるためその場に留まることが精一杯な様子でした。この日ばかりは私もなるべくアジサシたちの嘴の前にワカサギがくるように注意して投げてあげました。

 「風見鶏」という言葉がいつから、誰が使い始めたのかわかりませんが、もしかしたら昔の人は風向を調べるときに、鳥の飛ぶ姿を観察していたのかもしれません。前述の通り、風向計を指す言葉であり現代ではネガティブな意味で使われる事が多い「風見鶏」ではありますが、ここはもう一つ意味を加えて、「困難に立ち向かう勇敢な人」を指す言葉として、ぜひ辞書に載せてみてはいかがでしょうか。    
       
※引用『新明解国語辞典第七版』(三省堂)

(山本 幸介)

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