264号(2022年02月)7ページ
「ペンギンの採血」
ある日、日本平動物園のメールボックスに「ペンギンの採血のお願い」というメールが届きました。日本全国のフンボルトペンギンの血統を管理している動物園関係者からで、内容としては、全国のフンボルトペンギンの血統確認をしたいので、日本平動物園で飼育しているペンギンの血液を提供してくださいというものでした。血液を調べることで、病気だけでなく、血縁関係も遡って調べることができるのです。また、フンボルトペンギンのように雄と雌で外見上違いが見られない動物では、血液を調べることで雄か雌かを調べたりします。
作戦決行日は11月の休園日に決まりました。開園日のプールに水が入っている状態だと、ペンギン達がすぐプールに飛び込んでしまい、捕まえるのも一苦労です。その点、休園日は展示場のプールの水を抜いて掃除するので、捕まえるには絶好の機会です。かわいい走り方で逃げ惑うペンギンたちを飼育員が素早く捕獲してくれました。
さて、採血の始まりです。ペンギンの採血は後ろ足から行います。飼育員にペンギンを保定してもらい、後ろ足を握ると血管がぷくっと膨らみます。といっても、フンボルトペンギンの後ろ足は真っ黒でカサカサしているので、見るだけではあまりわからず、手で触りつつ、ここかな、と当たりをつける感じになります。また、場所によっては針を刺すと血管が元あった所から横に動いてしまい、あれ?刺す前はそこにあったのに・・・なんてことも。何回も針を刺すのは可哀そうなので、できれば一発で決めたいところです。今回は全部で6羽の採血を行いました。1羽目は手探りでしたが、だんだん慣れてきて順調に終わらせることができました。「わんこそば」さながらに、採血が終わったら休みなく次の個体を連れてきてくれた飼育員にも感謝です。ペンギン達には申し訳ないですが、病気になって本当に採血が必要になった時の練習ができたのもありがたかったです。
今回採取した血液の一部は、検査機関に依頼してフンボルトペンギンの血統管理に役立ててもらいます。また、残りの血液は日本平動物園で検査を行い、全羽健康であることがわかりました。今回とれたデータは今後、病気の個体が出た時の検査の参考にもなります。今後も飼育員や動物たちに協力してもらい、動物たちの治療や健康維持に努めたいと感じた1日でした。
(山口 真澄)