でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 268号の2ページへ268号の4ページへ »

268号(2022年10月)3ページ

ダチョウのドキドキ大移動 その1

 少し前の話になってしまいますが、6月16日にダチョウの「クランキー」をいままでバイソンがいたバイソン舎に移動しました。前回号の表紙にも書いてありましたが、もともと国内最高齢だったアメリカバイソンの「モモ」が亡くなり、ダチョウを移動しようという話がありました。しかし、上野動物園のほうからアメリカバイソンの「ラテ」を預かってほしいとの要望があり、延期となりました。4月にラテが無事に上野動物園へ帰っていき、5月頃から本格的にクランキーを移動するための準備をしました。

 いままでバイソンが入っていた獣舎なので、何点か改良しなくてはいけない場所がありました。まずは、バイソン舎の室内展示室の柵の間隔がとても広いので柵に目の細かい網を取り付けました。以前の柵は人間の腕も入ってしまうほどの間隔があり、蹴る力がとても強いダチョウに間違えて蹴られてしまうと大けがをしてしまう危険があり、またダチョウ自身も柵に足が引っかかり、パニックになってケガをしてしまう恐れがありました。

 そして、次に屋外放飼場の柵を改良しました。屋外放飼場の柵は低く、背が高いダチョウではモート(獣舎と園路を隔てている堀)に落ちてしまう危険があったため、柵にワイヤーをはって安全策を施しました。

 次に問題になるのは移動方法です。ダチョウは鳥の一種なので目を隠し暗くすることで大人しくなるといわれています。そのため、足を縛って車に乗せて移動する案などがでましたが、他の動物園で目隠しをした状態で周りを数人で囲って、園内を歩かせてダチョウを移動したという情報をもとに今回の移動の計画を考えました。

 クランキーはダチョウ王国から来園してきて以来移動したことがありません。また、当園ではケガ防止のため飼育員とクランキーが同じ空間に入ることがないようにしているため、いきなり入って行ってもクランキーがおとなしく目隠しされてくれるとは思えません。そこで、顔に被せる予定の袋に慣れてくれれば、目隠しができるかもと思いクランキーが触ることができる柵にかけておきましたが、その袋を担当者が持つと嫌がって逃げてしまいました。そのため、すこし力業になりますが何人かで一緒に入って強制的に顔に袋をかけて目隠しをすることにしました。

 まずは、予行演習として4人で入りましたが、人と人との間隔が空いているため、隙間を走り抜けてしまい、まったく捕まえることができませんでした。できるだけ捕まえる練習と目隠しをした状態で歩いてくれるかを確認したかったので、次は8人で挑戦し、どうにか捕まえて目隠しをすることができました。しかし、「大人しくなるなんていうのはうそだー」と叫んでしまうくらい目隠しをしても暴れていました。前に行ったり後ろに行ったり目隠しをしているので蹴りなどはなかったですがかなり動きました。そしてそのままなんとか歩く練習をしましたが歩いているというよりは、飼育員が一生懸命押している感じでした…。

 園内を歩かせるのは脱走の危険性もあるので迷ったのですが、足を縛ってダチョウがケガをしてしまった事例やトラックに乗せて万が一にも飛び下りてしまうと大事故になることもあります。予行演習で歩いてくれることがわかったので当初の予定通り園内を飼育員で取り囲んで歩いて移動することにしました。

その2に続く

« 268号の2ページへ268号の4ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ