でっきぶらし(News Paper)

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270号(2023年02月)7ページ

病院だより 「猛禽達のお引越し」

 寒い時期になってくると、人のインフルエンザが流行ってきたとニュースで話題になりますが、2022年は鳥インフルエンザも早い時期から流行が見られました。特に2022年11月以降は、近畿地方の動物園で飼育している鳥類が高病原性鳥インフルエンザに感染したことも話題になりました。12月には静岡県内でも野鳥で高病原性鳥インフルエンザの発生があったため、日本平動物園では、ダチョウ舎やペンギン舎に野鳥除けのネットを張ったり、フライングメガドームを閉鎖したりと対策を行いました。そんな中、爬虫類館横の猛禽舎の鳥たちについても防疫対策をする必要がありました。しかし、ネットを張ろうにも、檻の上からネットで覆うのは構造上困難であり、無理をして行っても敏感なハクトウワシがパニックになって怪我をする可能性もあります。2022年冬は運悪く、中型サル舎の工事でバックヤード棟は満室で動物病院の部屋も満員なこともあり、移動も難しく手詰まり状態でした。

 そんな困った状況でしたが、ある日希望の光が差します。動物病院のサル用の部屋がタイミングよく空いたのです。そこからパズル式にどこの部屋に誰を入れるか、担当者と相談し、12月中旬には中型サルのバックヤードの部屋の配置変更と猛禽達の移動にこぎつけました。

 動物の捕獲は何度も行ってきたのですが、その経験故に鳥類の捕獲時に肝心なことを忘れていました。それは「鳥は空を飛ぶ」ということでした。何を当たり前なことを、と思われるかもしれませんが、実は当園のヒゲワシは長年飼育されているうちに悟りを開いたのか、近づいても逃げませんし、すんなりタモで捕まって移動用ケージの中に入ってくれます。コンドルは種の特性として自力では飛び立てないので地面で捕まえることができます。問題はハクトウワシでした。まず、捕獲のために入室した時点で4m程の高さの巣の位置にいます。地面から長いタモを振り回してもハクトウワシはタモが届かない高さを飛び回っては休むことを繰り返し、地面には降りてきません。人を増やしたり、タモを変えたりと試行錯誤を繰り返し、結局巣までロッククライミングをすることになりました。さすがに巣に人がいると、ハクトウワシはびっくりして下に降り、捕まえることができました。終わった時には作業着はべちゃべちゃでしたがハクトウワシの巣の状態を確認できたことは収穫でした。まだ営巣はしておらず、繁殖にはもう少しかかりそうでした。2023年に展示再開してからの繁殖に期待したいと思います。

 現在、猛禽達は展示されていませんがバックヤードで元気に暮らしています。また鳥インフルエンザの流行が収まった頃には動物園のツイッターやフェイスブック等で展示再開をお知らせしますので、その際は是非猛禽達に会いに来てください。

(山口 真澄)

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