でっきぶらし(News Paper)

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274号(2023年10月)5ページ

サイコ、たくさんの思い出をありがとう。

ミナミシロサイのサイコが天国に旅立ってから早一年が経ちました。命日が近付くにつれ、タロウと遊んでいた光景、仲良く泥浴び、また時には餌の取り合いでよくケンカをしていたなぁ~と、ついつい思いにふける事があります。

亡くなった後に獣医が献身的な治療やサイコへの想いを「でっきぶらし」で執筆してもらっていたのですが、再度私からもご報告させていただきます(文字数の決まりもあり一部割愛させていただきます)。

令和2年12月、血の混じった膿が陰部から出てくる様になりました。すぐに投薬(抗生物質等)などの治療がはじまり、令和3年1月より陰部洗浄(特別な大きなシリンジにお湯を入れ陰部に差し込み浣腸のように洗浄する)を始めました。獣医が直接サイコの部屋に入る危険な作業なため、その間飼育員は気を紛らわすよう、サイコの背中をデッキブラシでひたすらこすります(気持ち良くなり落ち着きます)。

令和4年2月、以前にできた腫瘍が日に日に大きくなり腫瘍が邪魔をし、尿の出の勢いが弱まりはじめました。5月には餌食いも悪くなり、また陰部が腫れあがり肛門を押し上げているため排便の妨げになります。便秘で浣腸したくても肛門を触れるだけでも痛がり上手く出来ませんでした。

下剤を与えると1~2日に1回は出るようにはなりましたが、排便の時は腫瘍が刺激され痛そうで可哀想で私も心が折れそうでした。しかし、サイコが日々頑張っている姿に逆に励まされましたし、私が気持ちで負ける訳にはいきません。7月に入ってから横になる事も増え、足の所々に褥瘡(じょくそう)(床擦れ)が出来始めました。亡くなる前日の8月20日、この日も朝から外に出たがり、すんなりと立ち上がったので獣医と相談して放飼場に出しました。昼過ぎ、ぬた場(人工の泥浴び場)から這い上がれずにいるサイコをみてタロウが助けようとしますが出られません。とりあえずタロウを寝室に戻し職員総出でぬた場から引き上げてみるも、サイコは疲労で立ち上がれませんでした。翌日、クレーン車で吊り上げ何とか寝室に収容するもぐったりとしてあまり動けません。水を与えるとパクパクと口を開け飲んだ後に静かに目を閉じました。『ずっとずっと頑張ったから、もう目を開けなくて良いよ。』令和4年8月21日17時45分、眠るように息を引き取りました。

令和2年12月に治療が始まり約1年8ヵ月間、痛みに耐えて頑張ってくれました。和歌山県のアドベンチャーワールドから8才で来園し、33年間日本平動物園に貢献し続けてくれたサイコ。温厚な性格で人懐っこく、皆様から愛され、本当に素晴らしい女性でした。いつでもどこでもタロウを見守ってあげてください。ありがとうと同時にまだまだ尽くし足りなくてごめんね・・・。

市川 雅一

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