277号(2024年04月)4ページ
チンパンジーのその後
まずは悲しい話から入りますがご理解の程よろしくお願いします。令和5年8月22日にチンパンジーげんきのお母さんであるコニーが33歳という若さで亡くなりました。持病の発作を抑える薬を長らく投薬し続けていましたが、残念な結果となってしまいました。コニーは本当に良いお母さんで自分の仔のみならず他のチンパンジーの仔も率先して世話をしてくれるとても優しいチンパンジーでした。昔、げんきがまだ生まれて間もない頃に大怪我をしてしまい、怪我の治療に専念するためにコニーからしばらくの間取り上げなければならないことがありました。順調に仔育てしているさなかの出来事だったので人工哺育に切り替え、飼育担当が世話をすることに一抹の不安がありました。げんきがコニーのことを忘れてしまう恐れとコニーがげんきを素直に受け入れてくれるか心配だったのです。しかしその心配をよそにコニーに戻す際も、すぐにげんきを受け入れ大事そうに抱きしめてくれたことを今でも思い出します。コニーとの突然の別れとなり、飼育担当のみならずコニーの仲間たちもしばらくの間は元気を失った日が続きました。コニーの死を無駄にすることなく更なる飼育技術の向上に努め、残されたチンパンジー達と共に成長しなければと新たに心に誓いました。
突然一人ぼっちになってしまったげんきはというと、しばらくは姉のれんげに寄り添っていることが多くなり、それを察してか、れんげもげんきを励ますように優しくしてくれていました。れんげはまだ出産、仔育て経験こそありませんが、コニーの姿を間近で見ていたおかげで仔に対する接し方がちゃんと出来ています。将来きっと立派なお母さんになることを勝手に想像してしまいました。げんきの誘いを無視したり、わざと突き放したりとその日の気分によって態度が変わります。それでもげんきが諦めずにしていると、れんげもしばらくは黙って様子を伺っていますが、げんきの性格(とてもしつこいです)も災いしてかちょっとしたトラブルが起きる日が増えました。怒ったれんげに追い掛け回され、あげ句にはギャーギャーと鳴き叫び納得できないと訴える始末です。体つき、体力的にはまだれんげに劣るため納得できなくても我慢しているのでしょう。たまに調子に乗りすぎて生意気にもれんげをからかい、怒らせることもしばしばあります。その時の逃げ足の速さはれんげをも上回ります。
母親の愛情がまだ必要な時に突然の別れとなってしまいましたが、今では元気を取り戻し毎日活発に走り回っています。天国のコニーに心配をかけないようこれからも姉弟仲良く過ごしてもらいたいです。
佐野 彰彦