でっきぶらし(News Paper)

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84号(1991年11月)5ページ

さるの話題を追って【エリマキキツネザルの繁殖】

 晩秋、甲府の遊亀動物園を訪ねました。そこには、当園では見られないワオキツネザルの赤ちゃんがいます。で、何に驚いたかって、当たり前のことに驚いているのです。
 双児で生まれるのは、そう珍しくないので何とも思いません。問題は子の成長の遅さです。私がじっと見つめカメラを構えていると、担当の方が「それ去年の子だよ」です。
 こちらは今年生まれた子と思っていたものだから、一瞬きょとーん。あーそうだそうだこれで当たり前なんだ、一年経ったぐらいでは親に甘えていて当たり前なんだ、しばらくして気を取り直しました。
 私を常識外れの気持ちにしたのは、誰であろうエリマキキツネザルです。何もかもと思うぐらい、通常のサルの常識が当てはまりません。
 お化けザルの話の中でも述べたと思いますが、極端に成長が早いのです。一年どころか九ヶ月も経てば、可愛いとも親子だとも言う人がいなくなります。識別がつくのも担当者の他には、少々関わりを持つ数名に限られてしまいます。
 では、生まれたばかりの赤ちゃんは丈夫でしっかりしているだろうと考えたくなりますが、これも全く逆です。多くのサルの赤ん坊を見て、正常に生まれてあんなに弱いのは他には知りません。
 一般に原猿と言われるサルは単独生活するのが多く、赤ん坊を巣におくのも珍しくはありません。しかしそれが単数ではなく、二〜四頭でも当たり前なのは、エリマキキツネザルだけではないでしょうか。
 つい最近、発情を確認しました。恐らく春には再び賑やかでかしましい家族を形成するでしょう。見頃は一瞬です。可愛い姿を御覧になりたければ、時期を逸されませんように。

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