でっきぶらし(News Paper)

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87号(1992年05月)4ページ

一九九二年 春の話題を追って【クモザルの人工哺育】

 かつてのテナガザルの島、今はジェフロイクモザルが飼育されています。クモは英語でスパイダー、怒り狂うと巨大蜘蛛そのもの、誰がつけたかは知りませんが、言い得て妙です。
 かつてのモンキー舎においても飼育経験はあったのですが、繁殖はとなると沈黙せざるを得ません。何年か前に死産した為か、せっかく生まれた子を池に落としたことがあったぐらいのものです。
 それが六月九日の昼前、担当者がいいものを見せてやろうと胸に当てていた手をどけると、なんとクモザルの子が素頓狂な表情をして服にしがみついているのです。
 聞けば、母親が抱いていなければならないのに、オス親がしっかり抱いて離さなかったそうです。奪い取ったのか、母親が面倒を見なかったのかはともかく、そのままにしておけることではありません。
 今日は何か慌ただしい雰囲気だなあ、獣医は何をせかせかしているのだろうと思っていたのですが、これで合点がゆきました。程なく戻った車の荷台には、捕獲網だの吹き矢(麻酔用)だのが載っていました。
 可愛いって言うより、面白い表情をしています。目はぱっちりしているのですが、何かとぼけているイメージです。それでいて握力の強そうなこと、そうクモザルは尾さえも手足のように物をしっかりつかめるのです。
 後は無事に育つのを祈るのみですが、ことクモザルの人工哺育に関しては初めて。むつかしいとも、割合に簡単とも言えません。それに南アメリカ産だけに、微妙な乳成分(サルは一般的にヒト用を用いる)の違いも気になります。
 ついその前もお腹をこわしたとか、ちっともミルクを真面目に飲まないとかで嘆いていました。しばらくはそんな苦労話をちょくちょく耳にすることでしょう。

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