107号(1995年09月)5ページ
動物の変身(鳥類編)【フライングゲージの鳥達】
最近、フライングゲージでよくかえっている鳥と言えば、ツクシガモです。しかし変身度の点から言えば、この鳥はつまらないと言えるでしょうか親と雛の色彩の違いがさほどではなく、すぐに合点がいってしまうからです。
もっとも、違う観点では楽しませてくれました。一度に多くの雛をかえす点においてはチャンピオンクラスなのですが、何年か前に十一羽も雛をかえしたときのことです。
その雛が周囲の何かにおびえて、親鳥の懐に次から次へと潜り込んでいったのですが、全部が潜り込んだ様相、それは親鳥がまさしく袴をはいているようでありました。こんな楽しい珍妙な゛変身"を見せてくれたのはツクシガモだけでした。
このところ勢いは衰えていますが、フライングゲージでもっとも多く雛をかえしたのは、アメリカオシです。合計すれば、百羽は優に超えているのではないでしょうか。
親とは似ても似つかぬほどではないにしてもそこそこ違います。ところが、思わぬところで首を傾げてしまう場面があります。少し色の違う雛が混じっていることがあるのです。
オシドリと言えば、どなたでも御存知でしょう。カモ類の中では一番派手な色模様をしていて、ウソがホントか仲のよい夫婦の象窒ノされている鳥です。その鳥の雛が混じっていることがあるのです。
アメリカオシとオシドリ、いわゆる近似種です。雑種ができるかできないかはともかく、とにかく近い仲です。成鳥になれば容易につく判別も、雛のうちは分かり辛いものです。それが同じ時期にかえって混じれば…。
見慣れているのならそうでもないでしょうが、後学のためにどちらかを撮ろうと思っていく者にとっては、それは悲(喜)劇です。
首を傾げつつ撮って、後であれはオシドリの雛だと教えられて、苦虫を噛みつぶしたことも。あれには参りました。
フライングゲージの変身のチャンピオンと言えば、これはもう間違いなくショウジョウトキです。右に出る者はいません。
朱色の光沢を体全体に輝かせて羽ばたく様は、華麗の一言。他の鳥の写真を取りに来ながら、つい脱線してカメラがそちらの方向へ向かってしまうのもしばしばでした。
さあその雛ですが、何色と思われますか。黒や白が出てきたから、今度は違う色を想像されるでしょうか。実は、このショウジョウトキも雛の内は黒なのです。
くちばしも成長すれば三日月に細長くなりますが、雛の内は小さく先がとがているだけです。次第ゝに親と同じくちばしになってゆく様子は、フラミンゴの場合とさして違いはありません。
久しく成長過程を観察できませんでしたが、今年は、無事に孵化し、かつ成鳥。昔年の感激を再現してくれています。