でっきぶらし(News Paper)

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109号(1996年01月)9ページ

動物の仕草・動作あれこれ?U(類人猿編)【男と女の間には…(チンパン

 チンパンジーに限ったことではありませんが、真猿類には発情がくると陰部がざくろのように膨れ上がる種類がけっこういます。メスの体のオスを挑発する仕組み、と思っていいでしょう。
 動物の場合だと本能の赴くままであると、そう考えられておられるでしょうか。いいえ、それは大変な誤解です。当然、彼らにも心があり、心がある以上は相手を選ぼうとします。まして類人猿のような高等な動物となれば、尚更のことです。
 パンジーは、ピーチと名付けられた娘を残して豊橋の動物園へ貰われてゆきましたが、十六年余りいたことを考えると、少なくとももう一頭ぐらい子をなしていたって不思議ではなかった筈です。しかし、かつての彼女の“恋愛拒否”によって、かろうじて、ピーチだけをなす結果になったのです。
 ざくろのように膨れ上がった陰部を見て、今は亡きオスのポコはどんなに切なかったでしょう。誘惑されそばににじり寄ろうとも、当のパンジーは全くの知らんふりでした。
 よく暴力を振るわないと思いましたが、チンパンジーの社会ではメスへの暴力は厳然たるタブーです。正常なら、オスがメスを咬んだり蹴ったりすることはあり得ません。求めは、あくまで平和的にです。
 とは言え、一度少々傷つけたのを覚えています。陰部が膨張する自然の誘惑と実際の冷たい仕打ちの落差に、さすがのポコも苛立ったのでしょう。でも、傷つけたポコは、原因はどうであれ加害者、悪者扱いでした。
 再度、とは言えです。分からぬのは男と女の仲、いつ心を通い合わせたのでしょう。それと分かる仕草、動作はあったのでしょうか。類人猿から縁がなくなってしばらくしてから、パンジーが妊娠したとの報には、しばし狐につままれた気分でした。パンジー、とことん意地悪な女ではなかったようです。

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