でっきぶらし(News Paper)

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118号(1997年07月)10ページ

動物病院だより☆ブラッザグェノンの兄妹喧嘩

 9月に入っても暑い日が続いていましたが、ここのところめっきり涼しくなり、動物園の木々の様子もだいぶ変わってきました。
 皆さんはブラッザグェノンといってすぐにどんな動物が思い浮かびますか?そう、日本平動物園では中型サル舎にいる、頭巾のように左右にとがった額のオレンジ色の模様と鼻から顎にかけて白いあごひげのような長い毛が印象的なサルです。
 現在当園では1975年に来園したお母さんと1977年に来園したお父さんとその子供たちのオス1頭とメス2頭の計5頭が飼育されています。そんな家族の中でちょっとしたトラブルがあったのです。
 それはまだ暑い盛りの8月初めのことでした。夕方、飼育担当者から、出血はほとんどないけれども次女の背中に傷があるという報告がありました。どうもオスの子供が原因のようでした。その日はもう既にみんな寝室に入ってしまっているので、次の日の朝一番に捕獲しようということになりました。
 そして次の日に捕獲、麻酔をして傷口をみると思っていたよりも傷は大きく7〜8cmくらいで、筋肉も一部裂けていました。傷口の中を洗って縫合しました。その日の夕方にはもう餌を食べ始めたので一安心しました。
 サルの仲間は手が器用なので、このように傷を縫ったりするといじってしまい傷口をよけいに悪くしてしまったりすることがあります。ただ今回の場合、傷の場所が背中だったことやおとなしい個体だったのが良かったようで、傷口も全くいじらず順調にきれいになっていきました。また傷口が化膿しないように薬をやらなければいけないのですが、その薬が苦いので上手く飲んでくれるかが問題で、これも個体によっては餌だけ食べて薬だけ「ペッ」と吐き出すことになるのですが、餌に混ぜると手からとって食べてくれました。
 そして8月の下旬に傷もきれいに乾いているということで、退院の運びとなりました。退院といってもいくらおとなしいとはいえ、抱いてつれて行くわけにはいきません。とりあえず輸送用のケージに移さなければならないのですが、あまり麻酔はかけたくなかったので、まあそう簡単にはいかないだろうと思いつつも、入院している隣の部屋にケージを置いて仕切りを外して隣の部屋に追いやってみました。やはりそううまくはいかないもので、ケージの上にのっかってしまい、その中には入ろうとしません。じゃあ何か棒と板でうまく誘導しようと、使える物を探していて振り返ると、何と自分で輸送用ケージの中に入っていくではありませんか。急いでケージの扉を閉じて無事捕獲終了となりました。
 中型サル舎に運んで放飼場に放して、家族との久しぶりの対面となりました。そこには今回の怪我の原因となったオスもいましたが、お互い?拶して全く問題もありませんでした。いつもこんな風にいけば良いのですが、相手は動物ということもあってそううまくはいきません。まあだからこそ、色々と知恵を絞って面白いといえるのかもしれません。
 

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