でっきぶらし(News Paper)

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69号(1989年05月)8ページ

あらかると【出るな落ちるな袋の仔】

 最近の私の仕事はワラビー舎に行き、部屋の中や運動場を見回すことから始まります。袋の中の子が、こぼれ落ちて戻れなくなっていないかを確認する為です。
 袋から顔を出すようになる一〜二週間前後が最も危険な時期で、昨年だけで四頭の内三頭もなくしています。まだ、体毛も生えていない状態だけに、自力で戻る力はとてもありません。
 いま袋の中にいる子も一度こぼれ落ちました。が、昼間だったのですぐ拾い上げて親に戻すことができ、大事には至りませんでした。それ以後は落ちていませんが、決して油断はできません。
 ひどい親になると、二度、三度と落としてしまうことがあります。こぼれ落ちた子を元に戻すのは大変で、最低でも親をおさえる人と子を袋に戻す人と、二人が必要です。
 ましてやこの梅雨時、降雨中ならすぐあの世行きでしょう。雨が降っていなくたって、そう長く持つとは思えません。
 だものだから、朝一番にのぞけば少しは助かる望みがあるかもしれない、の思いで日課にしているのです。帰り際の午後五時頃も、ワラビー舎を一通り見回ります。
 その時、袋から顔を出し落ちそうになっている(私にはそう思える)と、気になってなかなかその場を離れられません。早くこの心配な時期が過ぎさってくれないかと願うばかりです。
(池ヶ谷正志)

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