でっきぶらし(News Paper)

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97号(1994年01月)10ページ

動物病院だより

園内の木々の芽も少しずつ大きくなり始め、一雨降るごとに少しずつ暖かくなってきている今日この頃ですが、お変わりありませんか。
この暖かさに誘われるかのように、土、日曜日の暖かな日には、園内にぎやかな雰囲気になってきました。
動物達ものんびり昼寝を決めこんでいる連中も見受けられています。しかし、フライングケージ内では、なわばり争いが日増しに激しくなり、ツクシガモのけたたましい鳴き声と伴に、他の鳥達を追い浮、姿は、すさまじいものです。
まさしく生存競争が始まっているといった感じで、陣とり合戦をやっています。
以前このフライングケージ内には、ペリカンやカナダガンが入っていたのですが、この陣とり合戦で、犠牲者がかなりでた為、それらの鳥達は、今、下の水禽池にて展示しています。その当時、目の敵にされたツクシガモですが、今はそれらのうるさい連中がいなくなったので、我もの顔で、他のカモ達を追いかけまわっています。
二月十七日の昼すぎに、無線が入り、「バーバリシープが生まれている」とのこと。急いでバーバリシープ舎にかけつけました。すると、子は仮死状態で、かすかに息をしていました。すぐに子を抱きあげ、病院まで走り、直ちに子供の治療を始めたのですが残念ながら息をひきとってしまいました。そうしているうちに、再び無線が入り「二頭目が生まれた」と連絡がきました。
再びバーバリシープ舎までかけもどり見てみると、母親は生みっぱなしで、子に近よってもきません。
「あーあ、こんなんじゃダメだ。人工哺育するしかないネェ」
あきらめて再び子供を抱きかかえ、病院にもどり、子の体を洗い、収容する部屋の準備をしていました。
するとまたまた無線が入り、「三頭目が生まれた」とのこと。二頭目の子を部屋に収容し、再びバーバリシープ舎まで走りました。バーバリシープ舎にたどり着き、様子をみてみると、なんと母親がしっかり子をなめているではありませんか。
「なんじゃ、最初の子に手がかかって、二頭目、三頭目は産みっぱなし、ということはあるけど、三頭目になって突然母親としてとしての自覚に目ざめるなんて、変な親だ。」と皆んな不思議でなりませんでした。どうせなら二頭目から面倒を見てくれたらいいのにという思いがありました。 三頭目は親にまかせることにし、二頭目に生まれた子の面倒は私達にまかされていました。はずかしい話ですが、バーバリシープの人工哺育は今までに何回かやったことがあったのですが、一度としてうまくいっていませんでした。うまくいかない理由の一つとして、子供が吸おうとしないのです。乳首をくわえさせると、歯をくいしばったままじっとしているのです。その為、こちらは根気強く少しずつ流しこませていくしかなかったのです。
今回の子供は、うまい具合に最初から吸ってくれ、第一関門はパスしたかのように思えました。しかし、それは甘い考えでした。
翌日の朝はよくなき、ミルクを飲んでくれたのですが、昼すぎ横になってしまい、夕方急死という結末をむかえてしまいました。やはり、与えたミルクに問題があったようです。
人工哺育をする場合、どのようなミルクをどういった方法で、一日何回与えていくかがポイントとなります。ミルクは現在、犬猫用のミルク、人用ミルク、そして牛乳があり、それらを組みあわせ、代用していくわけです。
乳成分がわかっていくものは、その割合に近づくように濃度を決めていくのですが、わかっていないものは大ざっぱに、サル類は人用を、イヌ科、ネコ科、クマ科といった食肉目の仲間では、犬猫用ミルクを、草食獣では、牛乳や人用ミルクを与えています。
今回、バーバリシ−プでは、人用の粉ミルクを規定濃度に溶かして与えてみたのですが、結果は失敗。もう一回考えなおし、子供の胃腸に無理がかからないミルクを探しださなければなりません。がんばります。(八木智子)

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