102号(1994年11月)10ページ
あらかると アメリカバイソン・直子 まさかの旅立ち
エーッ死んでる?まさか?ウッソー!・・・ひとりで騒ぐ・・・頭の中がゴチャゴチャしています。
放飼場の中に入っていっても直子だけが立ち上がりません。おかしい。やっぱり死んでいます。とにかく人を呼ばなくては・・・。
電話で獣医に連絡しましたが、電話の向こうでも「エー?」としか言いません。「とにかく死んでいるからすぐに来て」
昨年11月21日、午前11時30分の出来事です。
朝の八時過ぎにいつものとおり出て行った「直子」。オスが後を追いました。あれっ発情かな?そんなことを思いつつ扉を閉めました。
九時過ぎに乾草をやると、三頭で食べに来ました。いつもと変わりません。いや、変わらないと感じました。
どうしても目の前の事実が理解できなくて、頭の中がごちゃごちゃしていました。全く外傷もなし、苦しがって暴れ回った様子もなし、ただ静かに眠るように横になって死んでいました。原因究明のための解剖結果も、直接死亡に至るような病変などは見当たらないとのこと・・・。ますます理解に苦しみました。
「直子」は今も元気に過ごしている「メリー」の6番目の子供として、昭和55年5月21日に生まれ、14年余りで死んでしまいました。その間に5頭の子を育て上げ、「メリー」ほどではないにしろ、立派な母親ぶりを発揮していました。
しかし、ふだんの生活は、オスは「メリー」にべったりで「直子」は素っ気無い態度をとられていたし、母親である「メリー」にも頭が上がらずいつも小さくなっていました。そんな彼女も、そろそろ老境にさしかかった年齢にはなっていました。
ぽかぽかした日和の休園日に「直子」は眠るように死んでゆきました。日本平動物園のために今まで本当にご苦労さまでした。安らかに眠れ!
(鈴木和明)