でっきぶらし(News Paper)

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明日に向かって(1994年・主な出産動物) 思い切って親に任せたも

 ツチブタを説明するのは大変です。顔はブタそっくりですが、ブタとは縁もゆかりもありません。では、何の仲間かと問い返されれば、「うーん」。その系類は全て死に絶え、かろうじて生き残って地中に生息する生き物(生息地はアフリカ)、と思って頂ければ良いでしょうか。
 当然、飼育している園館もごく限られています。しかもペアで飼育し、かつ繁殖の実績を持っている動物園となれば、日本では広島の安佐動物公園と日本平動物園の二園のみです。(安佐動物公園は一回それも死産でした。)
 とはいえ、過去二回の繁殖は親が育てた訳ではありません。担当班と獣医が悪戦苦闘、外国の文献を引っ張り出して、それを参考にしながらうんうん苦しみつつ育てたのです。
 最初の時は、私も及ばずながら手伝いました。地中を掘り、アリ塚を崩してアリを食べるのに便利な前足の爪も、ミルクを与えるにはどうしようもない邪魔もの、その前足をタオルで包んで授乳しやすくするのが私の役割でした。
 さて、三度目の妊娠がわかった時、次なる課題は親に任せてみることでした。どの動物であれ、親に任せられれば、それに越したことはないのです。
 さすがに過去二度の経験からか、出産に際しては親は予想以上に落ちついたようでした。それで思い切れ、一週に一度、哺乳状況を観察する態勢をとったのですが・・・。
 獣舎の環境が今ひとつ良くなかったのか、親は授乳しつつもすっきり落ち着けなかったようです。それに床がコンクリートであったことも子には災いしたようです。
 親に誤って唐ワれたりしたことも重なり、子は22日間であえなく死んでしまいました。実績のあった状況を唐ワえれば、人工哺育にすべきであったとの見解も出てくるでしょう。が、よりよい明日を目差せば、親に任せてみるのも必要なチャレンジだったのです。

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