でっきぶらし(News Paper)

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明日に向かって(1994年・主な出産動物) 年の瀬を彩ったオオアリ

 オオアリクイの出産は、誰も予想していなかっただけに、周囲にやや驚きをもたらしました。と言いつつも、母親は過去に二度も育てた実績を持っていて、それはすぐに大丈夫との確信に変わってゆきました。
 そう、この、南米に棲みアリ・シロアリを主食とする不思議な生き物であるオオアリクイの繁殖も、日本平動物園が誇れる実績のひとつです。
 繁殖どころか、飼育する、ただそれだけでも大変、この動物を扱った経験を持つ者は少なからずそんな気持ちを抱くでしょう。だいたい何を与えればよいのか、とっさには浮かばない筈です。
 古い文献には、ひき肉にミルクとタマゴを混ぜて与えれば代用食になり得る、と書いてあったように思います。それに従って、日本の動物園である程度飼育されるようになったのですが・・・。
 前担当者は、それに盲目的に従うようなことはしませんでした。更にレバーやヨーグルトを加えたりするなど、より一層の工夫、かつ代用食であることを唐ワえ、午前と午後の給餌の間をできるだけあけるようにしました。
 工夫はそれだけに止まりません。発情期前には、わざわざオスとメスを別居させたりもしました。彼らと気持ちよく付き合うべく馴到にも心掛けていて、特にメスと仲良くしていた時は、オスは大いに妬けたのでは、と思えるくらいでした。
 飼育するだけでも大変なのに、五頭も六頭も生まれかつ三頭が順調に成育、いろんな工夫と努力があったればこそです。ただ古い参考資料を真に受けて飼育していれば、ここまでの実績を積めることはなかったでしょう。
 この後、どれだけ生んでくれるかは分かりません。が、初端の工夫の大事さを肝に命じられる成功例です。後に続く者、その貴重な気構えはしっかり引き継ぐべきでしょう。

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