104号(1995年03月)5ページ
親と子、比べてみれば(?T)(動物の変身) オグロワラビーの巻
変身のチャンピオンといえば、オグロワラビーに限らず、有袋類全てがそうだと言えるでしょう。理由は単純明快。胎盤がない為に超未熟な状態で生まれてこざるを得ず、それが故に袋の中で大変身をとげるのです。
育児のうと呼ばれるその袋の中、見せられるなら見せてあげたいものです。変身の秘密の部屋はどうなっているかと言えば、表面の肌は赤みを帯びてそれと黒い長い毛がまばらに生えていて、その中に乳首が四つついています。(他の種類は見たことがありません。)
親とは似ても似つかない赤ん坊、小指の先程の赤ん坊、体重もおそらく数gしかないであろう赤ん坊、いったいどうやって袋の中に入るのでしょう。母親のお腹から出た赤ん坊が自力で入ってゆけると思われますか。
それが、入ってゆけるのです。眼も見えない、前足二本が少ししか動かない赤ん坊が、自力でひたすら母親のお腹を這い上がって袋の中に入ってゆくのです。たどりつけば、好きな乳首にぎゅっと吸いつくのです。
そうしてどんどん大きくなって、「あっ、袋の中に赤ちゃんがいる。ほらほら今顔を出したよ。」と驚かれ、感激されるようになるには、半年も経過した後になってからです。
何ヶ月もその乳首を離すことはないのではないでしょうか。それほどがっちり強くくわえこんでいます。
まだまだ大きくなり少しは変身します。といっても、親子とは思えないほどではありません。彼らの大変身はベールにつつまれていて、お目にかけるのはなかなか困難です。
ただ便利な時代になったと言おうか、出産シーンなり袋の中までとらえた映像が、機会をみては紹介されるようになりました。オーストラリア、ニュージーランドといえば彼らの故郷、そのような地域の動物が紹介される時に注意していれば、御覧になるチャンスに恵まれようかと思います。