104号(1995年03月)6ページ
親と子、比べてみれば(?T)(動物の変身) マレーバクの巻
マレーバクはウマの仲間だと言えば驚かれるでしょうか。実はそうであるだけでなく、ウマの祖先型にずいぶん似ているとも言われています。つまり、何千万年も前はウマもずんぐりむっくりしていて、蹄の数もずいぶん多かったって訳です。
そのように原始的な要素を含んでいるマレーバク。赤ん坊の姿もずいぶん変わっています。形そのものは親とそんなに違わないのですが、色模様が似ても似つかないのです。
別名がうり坊とも呼ばれるくらい、生まれたばかりの時は、体全体に縞模様が入っているのです。見事な迷彩色との印象を受けなくもありません。
生まれてから数日経つと、その迷彩色のうり模様に変化の兆しが表れます。薄くじんわり下から親と同じ白と黒のツートンカラーになる色彩の分かれめがついてきます。
成長するに従って、少しずつ少しずつうり模様が崩れてゆきます。それに伴って親と同じ色模様を強めてゆきます。生後四ヶ月、だいたい親の半分近くの大きさになる頃、すっかりといっていいぐらい、うり模様は消えてしまいます。
でも、アラ探しをするように体の各部分をじっと見ていると、意外と名残りはあるものです。例えば、脚のひざより下の辺りなどに薄くうり模様が残っています。まだ甘えたい名残りを残しているようでもあります。
不思議なのは、同じような環境で生息するイノシシの子にやはりうり模様があることです。奇蹄獣と偶蹄獣、遠い昔にたもとを分かった他人同然の仲にも拘わらずです。
森林、藪だらけの中で子を生み育てるのに、特に天敵から子を護るのには、うり模様は都合がよいのでしょう。更に彼らの仲間でないトラも、同じような環境で生活する為故か、同じような縞模様を体に描いて周囲に見事に溶け込んでしまっています。