でっきぶらし(News Paper)

« 106号の7ページへ106号の9ページへ »

あらかると 「オランウータン・ベリーのそわそわ」

 私の担当しているオランウータンのメス、ベリーの面白く興味深い行動を教えましょう。
 ヒトに近い仲間なので、ヒトとほぼ同様の性周期があり、ベリーの場合だいたい二十八日周期です。その中に三十六度七分以上の高温期が三〜四日あるのですが、その期間は自分の精神状態がハイになり、いつもとは違う行動を示します。
 平常の時、彼女の部屋に入り体温を測定する為に部屋の隅を指させば、すぐにそこに行き容易に測らせてくれます。が、高温期は天井の鉄格子にぶらさがり、ガラス、扉、オリなどを軽く叩いたり、体や両手を振り回したりして、数回「下へ降りて。部屋の隅」と指示しなければ降りてきません。
 体温測定中も、私の服をいじったり、長ぐつをいじったりと落ち着きがありません。
 そんな調子ですから、彼女の態度を見るだけで、体温を測る前より今日から高温期に入ったとか、もう高温期も終わりだなとか、だいたい予想がついてしまいます。
又、高温期も含めてその前後は、オスのジュンはふだんより増してベリーをマークして離れなくなり、交尾を仕掛けます。ジュンは、担当である私を意識して運動場の隅の方にベリーの足を引きずって連れてゆき、うるさそうにチラチラ私の方を見ながらベリーにグルーミングをしたりします。
 ジュンがベリーを横に寝かせるのにはサインがあります。腕や足を軽くたたくとベリーはすぐ横になってジュンのなすがままになります。私も真似をして体温を測る時にベリーの足を軽くたたいてみると横にはなりましたが、ジュンに対してのようなそれ以上のことは許してはくれませんでした。
 私が命令すれば、お尻を見せ触ることはできますが、あのサインはジュンとベリーの間だけに通じるもののようです。ベリーにしてみれば、担当者はいったい何を考え期待しているのだろう、と変に思ったことでしょう。
(池ヶ谷正志)

« 106号の7ページへ106号の9ページへ »