106号(1995年07月)11ページ
子育て・裏方事情【交尾は?育児は?】
仲間のところに戻せるなら戻すべきです。それもできるだけ早くにです。それがリハビリ、本来性を取り戻すきっかけにもなります。
フンボルトペンギンのロッキー(数年前に死亡)の場合ではそれが効を奏して、交尾につまづき、抱卵しては失敗を繰り返しながらも、なんとか一人前のペンギンになってゆきました。
苦労するのは、むしろサル達です。生い立ち、初端に我々が関与することでのダメージは計り知れないものがあります。
母親の肌の暖かさを求めながらも、代わりに与えられるのはせいぜいタオルのふんわりした暖かさです。どう間違ったって心臓の鼓動は聞こえません。仲間の声も聞こえません。
物心がつけば、指をチュッチュッ吸いながらも人懐っこくなってきます。可愛らしくはありますが、最も様々を学ばなければならない時期に接する相手がヒトのみでは…。最近では、チンパンジー、オランウータン、シシオザルなどがそうして大きくなりましたが、正にその大きな問題を内抱しながら育っていたのです。
そう、将来同種とうまく付き合えるのか、なんとか付き合えたとして、交尾能力が、メスなら育児能力が、どうであるのかの問題を抱えてです。ヒトが関与してしまうことの悩み、ゆううつの最大のキーポイントです。