108号(1995年11月)8ページ
動物の仕草あれこれ?T(モンキー編)【サルのノミ取り(グルーミング)
お客様にごくふつうに見られていて、どのサルにもよく見られる仕草と言えば、これはもういわゆる“サルのノミ取り”ってやつでしょう。哀しいことに、お客様の多くは本当にノミを取っている、と思われています。サルにはノミはいないにも拘らずです。
「えっ、それでは何をしているの」とおっしゃいますか。ごくふつうに見られると言いましたように、彼らの日常的なあいさつ行動です。こんにちは、お元気ですか、仲よくしましょう、これらの意を含めてお互いに毛づくろいをしあっているのです。
誰かが、いかにもノミを取っているように見えたので、そんな風に名付けたのでしょうが、ひどい誤解です。サルにノミは寄生しません。寄生のしようがないのです。
ノミの幼虫って何を食べていると思われますか。何かを食べなくてはいけないし、いきなり血は吸えませんから、体から落ちるフケなどを食べている、と言われています。
それらを食べつつ血を吸える成虫になってから寄生するには、宿主が同じ寝床に戻ってくれない限り話にはなりません。
サルは、同じ寝床に戻ってくるでしょうか。いいえ、です。彼らは放浪します。毎晩寝る場所は違うのです。ノミが寄生しようがない理由が、これでお分かり頂けたでしょうか。
安住化しない限り、帰巣性がない限り、ノミは体につきません。サルの仲間では、例外的に私達にはつきます。それだけ私達はサルから離れているってことでしょうか。
話を戻しましょう。何かを口に入れているではないかと、よく観察しておられる方は、疑問を抱かれるでしょう。フケかシラミ、あるいは発汗した後に固まったシオを取って食べているのではないか、と言われています。が、定かなことは分かりません。
ともあれ、あれはグルーミングと言う親愛のあいさつであると、ノミを取っているのではないと、分かって頂ければと願います。