109号(1996年01月)8ページ
動物の仕草・動作あれこれ?U(類人猿編)【デモンストレーション】
笑いとは対照的な感情表現の示威、どちらかと言えば、これはオスのほうについて回る動作です。自らの力強さのアピール、これをしっかりやらねばメスの尊敬が得られません。
チンパンジーは、そのデモンストレーションが実に大仰です。物を引きずり投げ、大声を張り上げ、放飼場を目一杯駆け回って、自分の存在を強くアピールします。野生では、そのアピール度でオス間の地位が決まってゆくようです。
成獣のオスはおらず、若い個体で新しい群れ作りをやっている今、そのデモンストレーションにお目にかかれるのは当分先になりそうです。しばらくの間、お待ち下さいと言うしかありません。
ゴリラもやります。物を投げ、走り回るところまではチンパンジーに似ていますが、大声を張り上げることはしません。しかし愉快なのは、いかにもゴリラらしいのは、彼ら独特の仕草のドラミングです。
胸を自分の手の平で素早く叩くのですが、「ポコ、ポコ、ポコ、ポコ」と実にいい音がします。それにその時の表情が格好いいと言うか、実に生き生きとしています。
野生では、メスはオスに失望すると子供がいたって、その群れから去ってゆくそうです。男らしくて力強く、何があってもメスを守り抜く気概を示していなければ、メスからいつソッポを向けられるか分からないのです。
デモンストレーションの裏に隠れた、メスの信頼を維持する厳しさ、哀しさですが、それが“男の価値”ってヤツなんでしょう。
もっとも、これはオランウータンには見られません。単独で放浪生活する彼らに必要性がないからでしょう。
社会生活の濃密度の違いが、飼育下においても仕草や動作にもそれぞれの違いが出てきます。激しくデモンストレーションするのもしないのにも、それだけの背後があるのです。