111号(1996年05月)6ページ
動物の仕草・動作あれこれ(?W)食事の光景 「カリフォルニアアシカ、
午後3時頃、アシカ池の扉を開ける音がするちょっと前より、飼育係が餌を持ってくるのを察知したアシカは、プールの中をせわしなく行ったり来たりしながら、視線は扉をしっかり追って離れることはありません。
扉が開けば、飼育係のところへまっしぐらです。そして「グリアン」と呼びかけられるとすかさず敬礼します。二代目のオスは、以前鴨川シーワールドでショーに使われていた個体です。餌を与えられながら教えこまれたので、忘れることはないのでしょう。
後ろのほうでは、オスよりひと回り以上も小さいメスがやや遠慮気味に、でもそわそわしながら早くくれないかと待っています。餌時、気が立っているであろうオスのそばには、やはり近寄ってはいけないのでしょうか。
ところで、彼らの食事に“噛む”はありません。サバを頭からごくんと丸飲みです。ぽんと投げられたサバを口で見事にキャッチ、それを上手にくわえ直しては頭からごくんと丸飲みにしてしまいます。おいしそうにはおいしそうですが、味わっていない感じがしないでもありません。
では、口に合わない餌を与えるとどうなるのでしょう。誠に古い話で恐縮ですが、私が担当していた時、22年前の話ですが・・・。
海で釣った魚を食べきれないからアシカにと、持ってきて下さったお客様がいました。「いいですよ」と軽く受けて与えたのはいいのですが、いつものサバではありません。くわえたまではいいものの、サバとは違う臭い、舌ざわりにとまどったのでしょう。
充分丸飲みできる大きさなのに、丸飲みにしないのです。どの個体もくわえた魚をやたら振り回すのです。ばらばらにして食べたり食べなかったりです。ふだん口にしていない魚ゆえのようでした。丸飲みにしているだけなのに、それなりに味わっているのを思い知らされた一件でした。