でっきぶらし(News Paper)

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動物を知る(?U)人工哺育編 同居失敗例クロクモザルの場合

 もう28年前の開園当初、子供動物園でクロクモザルの子が飼われていました。おそらく私達飼育仲間でさえ、その記憶はかすかでしょう。
 一般の方からの寄贈でしたが、大きくなってそろそろ危険になってきたからと、モンキー舎の方へ引き取ってくれないかとの要請を受けました。当時、担当の私は南米産だから同じグループのジェフロイクモザルやシロガオオマキザルのいるところへ一緒にすればいいだろうと、安易に受け安易に同居させました。
 今の私なら断わっていたでしょう。どんなに努力して同居させたところで、ヒトの中で育った個体はヒトとうまく付き合えても、本来の仲間と付き合うルールを知らずに育っています。後々のトラブルの火種になるのが目に見えています。やめた方が賢明です。
 実際、トラブルを持ちこんだようなものでした。一見5頭が和やかにしているように見えても、ちょっと何かあると途端に喧騒になりクロクモザルは4対1で苛められました。最初はなんて意地悪な連中だろう、少しは思いやりくらいは持てよ、とどうしても苛める側を悪者にして見ていました。
 が、ことあるごとにヒト、つまり私を頼ってくるクロクモザルを見るにつけ、何ともいえない疑問が涌いてきました。トラブルの原因は新参いじめとかそんなのではなく、彼ら同士の付き合い方に問題があるのではないかと思いました。
 サルは社会性の豊かな動物、言い換えれば序列の非常にきびしい動物です。劣位の者は優位の者にきちんとあいさつ行動を取らねばならず、いい加減は決して許されません。礼儀知らずにはきびしい制裁が待ちうけています。
 私にそれを学ぶきっかけを作ったのはクロクモザルでした。むやみに動物を人馴れさせることへの疑問の出発点でもありました。結局は、クロクモザルを“追放”することでしか平和が得られなかったのですから・・・。

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