113号(1996年09月)11ページ
病院だより ホンシュウシカ 目の手術
今、病院ではメスのホンシュウシカが入院しています。発端は9月のある日のことでした。折からの台風の接近により園内は雨風がひどく、木が倒れたり、停電したりと大騒ぎでしたが、ふと柵の中を見るとホンシュウシカのメスが土をかぶった様に汚れていました。次の日近くでよく見てみると、目が少し飛び出していて、そのメスがオスに対して怯えているような様子があり、どうもオスの角に突かれたようでした。しばらくは消炎剤を与えて様子を見ていたのですがあまり芳しくなく、手術をすることになりました。傷を負ってから数日後、吹き矢で麻酔をかけ、病院の手術室に運びすぐ手術を行ないました。目の傷の場合、手術そのものはもちろん、手術後の管理が大切なので、それからは毎日おさえて傷の洗浄、消毒を繰り返しました。一方、オスの方はメスを傷つけた、お仕置きという訳ではないですけれども、角切りということになりました。今、春でもないのにオスの角が見られないのはその為です。
話は戻って入院しているメスの方ですが、1ヶ月ほど消毒、洗浄を続けていたのですが、目の一部が治りが良くなく、再手術となりました。その際、体重を測ったのですが、9kgも減っていたのです。餌食いも便も良かったのですが、やはり毎日おさえられるということはかなりのストレスだったのでしょう。体重がかなり減ってしまったということもあり、餌の濃厚飼料の割合を増やしました。すると今度は下痢になってしまったのです。確かに濃厚飼料が増えると便は軟らかめになるのですが、今回は随分と極端でした。こういった草食獣が下痢になるということは消化器官の細菌のバランスが崩れてしまっていることも考えられ、やっかいな状態になることもあるので、すぐに餌を元に戻しました。幸い2、3日で便は固まり、餌食いもさほど落ちずにすみました。
今は様子を見ながら、徐々に餌の濃厚飼料の割合を変えているところです。採食、排便も落ち着きを取り戻しました。傷が良くなり次第、なるべく早く退院させてやりたいと思っています。