でっきぶらし(News Paper)

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病院だより ムササビの同居

 ムササビの同居を始めています。この2頭のムササビは両方とも目が開くかどうかという状態で保護され、人工哺育で育ちました。1頭はメスで一昨年の春に保護され、後ろ足が片方ありません。もう1頭はオスでメスより1才年下ですが、手をかけすぎたせいか、どうも自分で自分をムササビと思っていないようです。メスの方は特に自然に帰すのが難しい状態ですから、2頭で繁殖をさせてみようと思ったのが事の始まりです。
 まずオスをケージから広い部屋に移しました。最初は不安なのか、床に置いてやると「グググ」と鳴いて助けを求めて来ました。とりあえずは高いところにも巣箱を掛けていたのですが、床に今までいた巣を置いて入れておきました。しかし次の日にはもう上の巣に入っていて、ぎごちなくはありますが、何とか木の枝や壁をうまく伝って巣に入っているようでした。
 そしてオスが部屋に馴れた頃、今度はメスを入れようと、まずは今までいた巣をオスの巣の反対側に置きました。同居をしてから2日目だったと思いますが、朝来てみるとメスが外の木に出たままで、体が前の日の雨で濡れていました。すぐに巣の中に入れたのですが、掃除の時に巣箱を揺らしてしまった時に飛び出して、オスの巣の中に入ってしまいました。すると今度はオスが出てきて、自分の巣の中に入ろうとしません。メスの顔を覗いてみると鼻から血を流していました。しょうがないので新しい巣を掛けてオスをその中に入れました。しかしそれもしばらくすると、お互い距離を保ちつつもトラブルはなくなりました。
 夜、僕が病院を出るときオスは走り寄ってきて、「もう帰るの?」と?拶をしに来ます。これではいけない、メスともっとうまくやって欲しいと思いながらも、かわいい奴だと思ってしまうのです。
(金澤裕司)

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