115号(1997年01月)7ページ
このところの繁殖事情◎クロミミマーモセット3頭が1度に育つ
小型サルの魅力は何といっても小さいところにあります。しかしながら、それは同時に無視される危険性もはらんでいます。
最も小さいピグミーマーモセットなら、親でもせいぜい250gあるかないかでしょう。これよりひとまわり大きいクロミミマーモセットにしても350g内外でしょう。
そんなサルが赤ちゃんを一匹くらい背負っていたって、ちょっと見た目には分かりはしません。私が担当していた時でも、気づかずに素通りされて行ったお客様がずいぶんおられたものです。
もっとも、気づかれた時の反応、これは凄いものがあります。小さいサルが更に小さいサルをおんぶしているのですから、驚かれるのも無理ありません。生まれたばかりは、ピグミーマーモセットで15g内外、クロミミマーモセットで30g足らずぐらいのが、背中にのっかっているのですから。
通常は、だいたい2頭で生まれます。時には3頭生まれることもありますが、この場合は子の育つ確率は落ちます。1頭ないし2頭が途中で死んでしまう場合が多いのです。
昨夏、クロミミマーモセットが3頭生まれたと聞いた時も、1頭は死ぬな、それはやむを得まいとの気持ちを抱いていました。私自身、コモンマーモセットで2度失敗を経験していましたから。
が、悪い知らせは一向に届きません。ヤマと思われる1週間が過ぎても、3頭ともに元気とのこと。これはひょっとしてひょっとするかもしれないと、淡いどころかかなり濃い期待が涌いてきました。
とにかく凄い母親です。あんな小さな体で帝王切開といえば、抱くのは絶望感ばかりです。当園で帝王切開された後に再び繁殖に成功した母体は彼女以外にはいません。
クロミミマーモセットこそ唯一の例外です。獣医の手術が素晴らしかったのか、母体が想像以上に丈夫だったのかは分かりませんが、とにかく凄いパワーです。
次に見せてくれたのが、他園でも珍しい3頭を一度にの子育て。あの小さな体のどこにそんな力が秘められていたのでしょう。