でっきぶらし(News Paper)

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あらかると 「人馴れしたアクシスジカ」

 アクシスジカ、昨年生まれの個体を少々人馴れさせてしまい過ぎました。私も長くアクシスジカを担当していますが、初めての経験です。 
 生後しばらくすると、自由に行動を始めますが最初の一週間ぐらいは、ミルクを飲む以外は目立たないところでじっとしていることが多いものです。
 そうはいっても、動物園のような限られた場所では、掃除の時などはけっこう邪魔になります。気を遣い、びっくりさせないようにしても、体が少し触るとたいてい子は親の元へ走り去ってゆくのが普通でした。
 ですが、今回の個体は少々違いました。立ちあがって逃げるでもなく、足元のにおいをかいで離れてゆこうとせず、親は親でそれを見ても警戒して呼ぶこともしませんでした。ただ、じっとその行動を見ているだけでした。
 親が全く人馴れしていないのに、どうして子供だけが人馴れしてしまったのか、少し不思議な気がしないでもありません。ともかく、そうなると可愛くてついつい体をなでてしまいます。
 相手もそれが気持ちよいのでしょう。私が獣舎に入ると体を寄せてくるようになりました。度が過ぎてくると、服や長靴を引っ張ったり、糞の入っているバケツに頭突きをしてじゃれたりと、かなりのやんちゃぶりも発揮するようにもなりました。
 可愛いには可愛いものの、将来を考えると黙視するわけにもいきません。いずれは立派な角が生えてきます。人に対する恐れがないと、その角は糾?に変わってしまいます。
 心を鬼に。最近は近寄ってきても体をなでるのはやめ、掃除の邪魔になるときは、軽く蹴とばしてどかすようにしています。効果は徐々に表れ、以前のようにしつっこくつきまとってくるようなことはなくなりました。少し安堵したものの、もしこの個体だったらずっと触り続けられたのにとの思いが脳裡をよぎり、残念な気がしないでもありません。
(池ヶ谷正志)

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