でっきぶらし(News Paper)

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動物病院だより

 現在動物園にはいくつかの役割がありますが、その中の一つとして種の保存があります。その一環として、当園はレッサ―パンダの国内血統登録を行なっています。血統登録開始以降、中国系亜種に関しては飼育頭数の増加は見事な右上がりで、1997年末現在では中国系亜種の全世界の飼育数の半数近くを占めるようになりました。しかし繁殖するペアが限られているので個体群として不健全になりかけており、それを健全にするには増えていない血統の繁殖が不可欠となってきました。その様な状況下、当園のオスの「シンシン」はまさにその増えていない血統だったのですが、ペアを組んでいるメスの「ミミ」とは他人の関係で、発情さえ見ることが出来ませんでした。そこに釧路市動物園からメスの「かあさん」を貸し出しても良いという話が持ち上がり、昨年の2月に借りることになりました。
 レッサ―パンダの発情期は1〜3月なのですが、昨季はお見合いが精一杯で交尾はもちろん発情兆候等も見ることができませんでした。
 そこで、ある程度お互いの仲が落ち着いてきた今年こそと思っていたところ、昨年の12月頃より、シンシンがかあさんを追いかけるようになり、明らかにメスとして意識しているように見えるようになりました。このような行動はミミに対しては全く見られないものでした。これは「今年はいけるのでは!」と期待に胸を膨らましながら、発情を誘起すると言われているビタミン剤をやったり、子宝祈願をしてもらったりしていました。しかし日が過ぎるのは早いもので、あっという間に3月の中旬に入ろうとしていました。その間担当者からは「どうもシンシンの押しが弱いみたい」とか、「かあさんはシンシンのこと嫌いみたい」などと聞かされていましたので、今年もダメかと思っていたのですが、その矢先にレッサ―パンダが交尾しているとの報告が入り、飛んでいくとシンシンとかあさんが交尾しているのを見ることができました。 
 当然、これで即繁殖というわけではなく、あくまでもその第一歩なのですが、今まで交尾さえも見られなかったのですから期待をせずにはいられません。もし繁殖に結びつけば6から7月に出産となります。かあさんも既に10才以上ですから、決して若い個体ではありませんので、周囲の環境を整え、注意深く観察し、できるだけ良い条件にしてやりたいと思っています。上手く繁殖までたどりつくように担当者、病院共々祈っています。
(金澤裕司)

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