でっきぶらし(News Paper)

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あらかると 「夫婦生活を邪魔するなかれ」

 前号のアラカルトで紹介したオランウータン夫婦の別居生活の試みは、見事に失敗に終わりました。担当者である私の単なるおせっかいで幕を閉じました。
 交尾適期は4、5日のみを同居、それ以外は別居生活というサイクルを3クールやってみましたが、何ひとつ得るものがなくマイナス面ばかりが出て中止となりました。
 別居生活をやめたのには、大きくふたつの理由があります。ひとつは、メスが発情期に見せていた私へのタッチが、1クールめ、2クールめと徐々に弱くなり、とうとう3クールめには全く見られなくなってしまったことです。放飼場でも、適期にもかかわらず全く他人関係で近寄ることさえもしませんでした。
 もうひとつは、ダイエット中でもあったのに2kg近くも増えてしまったことです。放飼場へ出してもとにかく動きません。一日の大半を擬木の洞の台の上で、修行中のお坊さんのごとく過ごして太るって訳です。
 さて、別居は解消し同居と相成りました。これでメスの運動量は全く違ってきているので、体重はプラスになることはないでしょう。
 しかし夫婦生活のほうは、あいかわらずのようです。それでも時々いっしょにいる姿は見られるようになってきています。
 その時期だけ同居させて、一気に燃えさせようというのは私の浅はかな考えのようでした。夫婦生活が淡白な時こそ、すぐに手の届くところにお互いがいるのが大事ではないでしょうか。
 私、オランウータンの夫婦生活にいらぬおせっかいをしてしまって、大変に役立つ人生勉強をさせていただきました。
(池ヶ谷正志)

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