122号(1998年03月)6ページ
動物病院だより◎おてんば娘ランラン
今年の冬は暖かく冬らしくない冬でしたが、それでも暖かい春がやってくるのは嬉しいものです。また春といえば色々な転機の季節でもありますが、そんなときにちょっとした出来事がありました。
それは年度末の3月21日のことでした。夕方園内を巡回していると、無線ですぐに中型サル舎へ来てくれとの報せが入りました。急いで行ってみると、シシオザルの1996年4月生まれのメスのランランが、大きな丸太の止まり木の上で動けなくなっており、痛そうにしています。よく見てみると、右足を丸太とその支えである枠の間に挟んでしまっていたのです。
実は以前もこのランランは同じようなことをやっていたのです。それは去年の夏のことなのですが、その時は放飼場のフェンスと壁の間に手を肘のところまで突っ込んでしまい、抜けなくなったということがありました。その時は引っ張っても抜けそうにないので、壁のコンクリートを少し削って抜くことが出来ました。自分を助けてくれるのがわかるのか、じーっとおとなしくしていました。
今回は足を引っ張って抜くことができたのですが、下に降りて歩いていても、右足は握ることは出来るようですが、膝から下がブラブラしていて体重をかけることが出来ません。どうも足を挟んでいるのを発見するまでに相当暴れたようで、骨折もしくは関節が外れて靭帯が切れてしまったようです。すぐに入院ということになり、病院でレントゲンを撮って調べてみると、膝のすぐ上の部分で骨が折れていて筋肉と関節を突き破っていました。幸いなことに膝の関節をつないでいる靭帯は無事なようでした。その日はいくつか注射をして安静という形をとり、次の日に手術をして骨を元の位置に戻すことにしました。
次の日の4月1日の朝から、麻酔をかけて手術を開始しました。手術をして骨を固定するには色々な方法があるのですが、その中で髄内ピンというステンレスの棒を2本、骨の中に入れる方法を選びました。手術は3時間ほどで終わり、更に外にギプスを巻いて治療は終了しました。夕方には餌も食べるようになりました。実は4月1日は彼女の誕生日なのですが、散々な2才の誕生日となりました。
手術の後は、ばい菌に感染しないように薬を飲んでもらうのですが、だんだんと薬を疑うようになり、薬の入っている食べ物は食べなくなってきたのですが、手を替え品を替えなんとかだましだまし薬を飲ませました。
その間、骨折した足はあまり使わないせいか、外のギプスが取れてきてしまったので、2度ほど注射して麻酔をかけて取り換えたのですがそれが気に入らなかったようで、私はすっかり嫌われてしまったのですが、それでも餌を持っていけば、それに薬さえ入っていなければ怒りながらも食べてくれます。麻酔をかけた時にレントゲンを撮って骨のくっつき具合も見ていますが、経過は順調なようです。好奇心が旺盛なのはよいのですが、もう少し気をつけて欲しいものです。
(金澤裕司)