123号(1998年05月)5ページ
あらかると 「情報公開はどこまで?」
平成10年6月27日(土)動物園内午後4時過ぎ、ホンシュウシカ舎前で、午後2時に出産したホンシュウシカの赤ちゃんを観察していた時、お客さんとの会話。
3才くらいの女の子を連れたお母さん
「すみません、あの赤ちゃんはいつ生まれたのですか?」
私「2時間くらい前です」
お母さん「えー!生まれたばかりですか」
子供に向かって「○○ちゃん(名前は忘れた)あの赤ちゃん、さっき生まれたばかりだって!ほら、お母さんが一生懸命なめているよ、やさしいね。」
私「あのメスは、本当のお母さんではないのです。あのメスは4日前に出産したのですが、生まれたばかりの赤ちゃんが死んでしまったので、自分の赤ちゃんだと思って面倒を見ているのです。」
お母さん「えーそうですか、かわいそうに」
子供に向かって「あのお母さんの赤ちゃん、死んじゃったんだって。自分の赤ちゃんと思っているんだね。きっとさみしいんだね。」
お母さん「ほんとうのお母さんはどこ?」
私「あそこにいます。」
お母さん「赤ちゃんの世話はしないの?」
私「本当のお母さんが来ると、代理母が追ってしまうんですよ。」
お母さん「まあひどい!」
一生懸命子供をなめている代理母に向かって
「本当のお母さんに赤ちゃんを返しなさい。」
子供に向かって「ひどいお母さんね。赤ちゃんとっちゃったんだって!」
私「だいじょうぶですよ。どちらのお母さんが育てても、赤ちゃんが健康に育てばいいのですから。」
お母さん「そんなー!本当のお母さんがかわいそう!」
(この会話の反省点)
・情報は一度に全部出すと、受け取る方は混乱する。
・情報は、必ずしも全部出さなくてもよいのでは?代理母のことは黙っていた方がよかった?
・最初の情報だけなら、代理母も悪者にならなかったし、お母さんも気持ちよく帰ることができた?
(追伸)
その後、本当のお母さんが強くなり、また、子供も自分の本当のお母さんを認識して、乳を飲み、親子関係は修復されました。
(鈴木和明)