でっきぶらし(News Paper)

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友の会コーナー レッサ―パンダと過ごした1日

佐渡友 章子 
 今回の飼育実習では、オウムと羊とレッサ―パンダのお世話をさせていただきました。その中でも、一番長く関わったレッサ―パンダのすばらしい体験をお伝えしたいと思います。
 レッサ―パンダが食べた古い笹。寝部屋の中からズズズーと引っ張り出して、お隣のヤギさんの所にポッと投げ込み、食べてもらいます。笹のなくなった中に入ってみると、目に飛びこんできたのがフンの山。それぞれ決まった場所にするため、長さ4センチ程のフンが目立つところに30個くらい、まさに山になっているのでした。しかし、それらはつややかで深緑色をしており、全く臭くありません。飼育係さんは、それぞれ1つずつ採取します。名前入りのビニールに入れ、大学の先生に送り、繁殖の時期なのでいろいろ調べてもらっているそうです。残りのフンはきれいに集めて捨て、エサと水のトレーも回収し、たわしできれいに洗います。その後、ホースで水を流しながら、デッキブラシで入念に洗います。
 寝部屋の中はとてもきれいです。狭くてもそれを感じさせません。そこには、飼育係さんの普段からの心掛けが感じられます。器具の使い方、洗い方、ホースの巻き方にいたるまで気を使い、それが飼育の基本であることを教わりました。
 さて、エサの調理に入りました。エサは、リンゴ、バナナ、ミカン、煮ニンジン、煮甘藷、粉にした煮干し、ビタミン剤入り粉ミルク。レッサ―パンダは、見るとリンゴなどを手で持って食べるので、大きめにバッサバッサと切るのかなと思っていましたが、意外に1センチほどのサイコロ状に切ってミルクと一緒に出していました。しかし、リンゴだけは扇型に切って、並べておきました。
 エサに関しても、それぞれ個性があるそうです。ミミちゃんは大好きなリンゴから食べ、シンシンは煮干しをきれいに残し、カアサンはあまり好きでないオレンジ系のものを、仕方なく最後には食べる。そしてエサの与え方にも気を使います。1ヶ所歯が抜けているカアサンには、リンゴをかみ切りやすいように薄くします。飼育係さんの話の端々から、動物達の体調や性格をしっかり把握していることが感じられ、とても感心します。
 そして、夢のような時間がやってきました。レッサ―パンダに直接リンゴをあげることができたのです。とっても可愛くてうれしい反面、鋭い爪と、飼育係さんからタイミング良くやらないと手を噛まれてしまうと言われていたので、内心ビクビクしながらうまくやろうと必死でした。レッサ―パンダはもうリンゴに夢中で、私の膝の上に乗ってきます。私の膝にはその時のことを思い返すとまだ感触がよみがえってきますが、爪に力はなく、とてもソフトでした。でも重さがかかるので、人間の子供が乗ってくるような、そんな可愛らしさを感じました。リンゴの端を持って口のあたりに近づけると、濡れた鼻を私の手にこすりつけるように食べてくれて、もう幸せの瞬間です。一生忘れられない、貴重な体験でした。
 その後、エサの笹を裏の山から採ってきました。大きな竹の木1本を、飼育係さんはいつも1人で切って持ってくるそうです。やはり笹にもおいしい笹とまずい笹があるそうですが、その辺り一面がハゲ山にならないよう、バランス良く切っているとのこと。動物だけでなく、環境に対しても気を使います。その笹を、レッサ―パンダの前まで持ってきて、寝部屋にそれぞれ適した量の笹を入れ、自然に近い形に整え、エサを用意し、放飼場の分の笹は明日まで池につけておいて、用意は終了。鍵もしっかり確認し、無事、レッサ―パンダを寝部屋に迎えることができたのでした。
 動物達の命を預かっているだけに間違いが許されない中で、仕事を正確にてきぱきとこなしていく姿は、とても格好良かったです。動物達よりもやっかいな私たちの面倒を一日見てくださり、ありがとうございました。そして、おつかれさまでした。

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