でっきぶらし(News Paper)

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日本平の好記録・珍記録 〜 マサイキリンの繁殖と人工保育 〜

(飼育課 小島昭一)
 マサイキリンの飼育は、昭和44年8月の開園以来今年で29年になります。その間に2頭のメスから10頭の子が誕生しています。一般にキリンの人工保育は大変難しいとされていますが、当園では5頭も成功しています。これは国内でも珍しいことと思いますので、今回その経過について報告します。
 昭和44年6月末に、オス(富士雄)メス(高子)2頭のマサイキリンが来園しました。共に2〜3才の若いキリンで、日本の気候にもすぐに馴れ、順調に成長して、最初の子は昭和49年1月に生れました。子はメスで、高子も落ち着いて育児し無事に成長はしましたが、生まれた時のケガで関節炎となり残念な事に2才で死んでしまいました。その後高子は4頭の子を産み全て自分で育て上げました。しかし高子も、昭和56年6月に死亡してしまいました。
 その後、高子の2番目の子の徳子が成長し、6才になった昭和57年に繁殖を開始しました。2月に生まれた子はオスでした。子を生んだ直後、徳子はビックリしたのか前脚で子をケリに行ったのです。普通は子の体を舐めてきれいにするのですが、それもしません。替わりに飼育係がワラや布で子の体をふいてやりました。その後も何回か授乳を試みたのですが、攻撃的な態度の為、やむなく人工保育することにしました。牛の初乳を1週間〜10日飲ませ、その後は生の牛乳を与え、無事に成長させることができました。これを含め、徳子は5回の出産をしましたが、いずれも子育てせず、5回連続のキリンの人工保育は、おそらく日本一の記録ではないでしょうか。本当に飼育係泣かせのキリンでした。この徳子も、自分で子を育てることもなく、平成2年に急性心不全で死亡してしまいました。
 現在は、宮崎生れのメスと昨年10月にアメリカからやってきた若いオスの2頭を飼育しています。早く次の赤ちゃんの顔を見たいものです。

No. 繁殖年月日 性別 名 前 哺育状況 ♂親 ♀親 経過
1 昭和49.01.24 ♀ 富士子 自然 富士雄 高子 昭和51.02死亡
2 昭和51.04.06 ♀ 徳子 自然 富士雄 高子 平成02.08死亡
3 昭和52.09.07 ♂ ゴロー 自然 富士雄 高子 昭和53.10放出
4 昭和54.01.19 ♂ 英男 自然 富士雄 高子 昭和54.11死亡
5 昭和55.06.07 ♂ 自然 富士雄 高子 昭和56.02死亡
6 昭和57.02.06 ♂ 一樹 人工 富士雄 徳子 昭和58.05放出
7 昭和58.06.21 ♀ 綾子 人工 富士雄 徳子 昭和61.02死亡
8 昭和60.02.18 ♂ 一八 人工 富士雄 徳子 昭和63.01死亡
9 昭和61.11.14 ♂ 一四 人工 富士雄 徳子 平成01.04放出
10 昭和63.04.17 ♂ 四郎 人工 富士雄 徳子 平成09.09死亡

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