でっきぶらし(News Paper)

« 128号の2ページへ128号の4ページへ »

あらかると 「ツバメのお宿は?」

 春から夏にかけて、病院は大忙しです。この季節、巣から落ちたり、親からはぐれたりした鳥のヒナがたくさん保護されてくるのです。ピーピー(ギャーギャー)口をあけるヒナに、私たちが親代わりにせっせとエサを与えて育て、ひとり立ちしたら放鳥するのですが、本当の親が育てた純天然物に比べて、人間が育てた養殖物(?)は、何だかひ弱な感じがして、野生に帰しても生きていけるのか、いつも心配でした。
 一昨年、コシアカツバメのヒナが巣ごと5羽、やって来ました。何とか大きくなり、病院の2Fの広い部屋で飛ぶ練習をし始めたのですが、甘えん坊とでもいうのか、いつまでも口をあけてエサをねだるので、少々てこずりました。それでも、1羽、2羽と放鳥用の扉から旅立って、渡りの季節には間に合いました。
 そして昨年の夏、1つがいのコシアカツバメが病院の玄関の上に巣づくりを始めました。こんなことは初めてでした。玄関の真上は、放鳥用の扉です。病院育ちが、無事南へ渡り、里帰りしたのに違いないと皆確信したのです。しばらくすると、ヒナの泣き声が聞こえ、「立派に野生でやっていける子もいるのね。」とうれしくなり、毎日巣を見上げていました。
 ところがある日、事件が起こりました。まだ羽根もろくに生えていないヒナが、巣の外に落ちているのです。2日間ほどで全てのヒナが落ちてしまい、まだ息のあった1羽を収容しましたが、数日で死んでしまいました。犯人はスズメでした。ツバメの巣が気に入って、つがいでやって来て乗っ取ろうとしたのでした。コシアカツバメも必死で応戦したのですが、タフなスズメにはかなわなかったようです。
 今年は早々に、スズメが巣材を集めて運び込んでいます。コシアカツバメもやって来て、病院の周囲を飛び回って偵察しています。人間はといえば、大人気ないと思いつつ、かわいいツバメのためにスズメの巣作りを邪魔しています。
(望月緑)

« 128号の2ページへ128号の4ページへ »