でっきぶらし(News Paper)

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あらかると 「ミディーまたかよう!」

 昨年アシカの母親ミディーが出産55日目で育児放棄したことはご存知だと思います。育児に疲れたのか、何かのショッキングな出来事が身のまわりで起こったのか子どもとの相性がひどく悪かったのか、育児放棄の原因が何なのか分からずじまいでした。 
 本年も6月17日に出産をしました。昨年の二の舞をしないように、母親ミディーに対してはなるべく刺激を避けるよう気を使い様子を見ました。 
 当初、昨年育児放棄したとは思えないほど過剰ともいえる育児風景が見られました。子供が泳ぎたいのにすぐに陸にあげたり、飲みたくないおっぱいを強引に飲ませようとしたり、あげくの果てに子供の上に乗り押さえつけるため、苦しくて母親の腹の下で泣き叫んでいる子の姿が見られたりしました。いつ育児放棄するか不安を抱え、その時に備え生後1ヶ月目から離乳用の生きた鯉を購入し池に放し始めました。 
 生後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月が過ぎ、このまま過ごしてくれればと思いましたが、生後102日目で恐れていたその日がきました。いつもと違い池が騒がしいので様子を見ると、子が親に近づくと親が子に対して威嚇し、親が子に近づくと子が逃げる風景が見られました。その週の池の清掃作業時に長時間にわたり哺乳しているのを見て安心はしましたが、念のため子の体重測定をし、次の週に体重減の状態ならば人工哺育に移る予定にしました。
 その次の週の清掃が来ました。普段忙しく時間に追われる作業をしているので、池の清掃時間が格好の観察時間になるわけです。子が腹を空かし怖がりながらも親に近づくと、親は子を威嚇します。それでも子が近づくと、親は子の体をガブリと噛みつきます。子は痛がり泣きながら親から離れます。哺乳できないので体重も当然減少し、子の後ろ姿がすごく寂しく見えます。
 やむなく子を取り上げ動物病院に移し、人工哺育に切り替えました。112日も親に育て上げられたアシカがミルクを飲んでくれるか心配で、どのようにミルクを与えたら良いか不安でしたが、その日のうちに部屋の中の池に放した生きた鯉を食べてくれた時は感無量で劇的な瞬間でした。
 非常におとなしく、人に対して攻撃的でなく可愛い子です。これからは私が親代わりで育てますが、病気をしないで大きくなることを望みます。動物病院でしばらく飼った後アシカの池に戻す予定ですが、見かけたら「グリル、頑張って!」と一言かけてください。
 もう一言、母親ミディーには「だめでしょ、もっと頑張らなければ」
(川村敏朗)

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