131号(1999年09月)10ページ
あらかると 「オランウータン・ジュンの退屈」
オランウータンのジュン(オス)は、最近放飼場に出てもなんだか一日中つまらなそうにしています。私は、その原因は隣の住人であるゴリラのゴロン(オス)にあるような気がしてならないのです。
ゴロンはここ4ヶ月ほど、足の怪我の治療のために放飼場に出ていません。一日を室内で過ごす毎日で、ジュンとは全く顔を合わすことはなくなっています。
とはいっても、ジュンは恋しいゴロンに会えなくてつまらなさそうにしている訳ではありません。ゴロンが足を怪我する前は、2頭はオリ越しにお互いに誇示行動をぶっつけあっていました。
例えば、ゴロンが胸をたたきワラをオランウータンのオリに投げつけると、ジュンはオリをゆすり大きな吠え声で応戦する、という具合です。お互いにこれによるストレスはあるにはあったでしょう。でも、何の変化もない日々よりはよかった筈です。
ライバル心をむき出しにして張り合う緊張感は、多少のストレスを受ける以上に放飼場での生活を活気づけていたと思います。ジュンにとっては、10年以上も隣同士で顔を突きあわせてきたケンカ仲間でもあります。
ゴロンが一日も早く放飼場に姿を見せ、またお互いに誇示してやりあう日を待っているに違いありません。
(池ヶ谷正志)