144号(2001年11月)3ページ
オマハ出張記(パート2)
こちらに来るまでは研修施設に宿泊すると聞いていたのでびっくり!VIP扱いと聞いてさらにびっくり。結果的にオマハ滞在中6日間、本当にVIP待遇でした。海野さんと感謝感謝の毎日でした。
このゲストハウスで、ダンさん、武智さんと今後の打ち合わせをしていると、窓の外に見覚えのある顔が。「あ、佐渡友君だ。」4月からオマハへ派遣されている佐渡友君が合流して、ほんと千人力の力を得た感じでした。5人で一時間ほど今後の打ち合わせをして、佐渡友君を残して解散する。
今、6時になろうとしているのに動物園の中はまだお客さんがたくさん残っている。「閉園時間は何時?」佐渡友君に質問すると、「閉園時間は5時だけどこちらは夜九時過ぎまで明るく、日没近くまで園内にいられるんですよ。」と答えが返ってきた。 日本のように時間でお客さんを追い出すようなことはしないようです。「園内見学しますか?」「ん、もちろんいくよ」すぐにゲストハウスを飛び出して園内へ・・・
ゲストハウスの隣に「ダマガゼル」がいる。その隣に「オカピ」が・・・ すぐに写真をとろうとすると「今日は時間が無いからさっと見るだけにしましょう」佐渡友君の冷静なお言葉。仕方なく写真はあきらめていろいろな動物を横目で見ながらスタスタと早足で園内見学。一時間ほどでゲストハウスに帰ってくる。そこにはすでに姉妹都市協会の会長である ラリーさんが待っていてくれて いた。今夜の夕食はラリーさん の招待だということでした。車 に乗って郊外にあるイタリアン レストランへ、約20分程で到 着。ラリーさんは「オマハ市は肉牛でも有名です。オマハ牛のステーキはおいしいですよ」とラリーさんおすすめのステーキをお腹いっぱいいただきました。広い店内はお客さんでほぼ満員状態、そんな店内でいきなり「ハッピーバースデー」の合盾ェ始まりました。見ると車椅子に乗った黒人のおばあさんがプレゼントと家族に囲まれてウエイトレスの音頭で歌が始まったのです。その合盾フ輪は周りに広がってみんなで大合盾ノなりました。家族を大切にするアメリカの人たちの生活を垣間見てほのぼのとした気持ちになりました。
オマハ滞在二日目、早速「今朝はプロングホーンの人工哺育を見せるから」と、水族館係長のショーンさんがカートで迎えに来る。通訳の佐渡友君と3人でカートに乗り込み、病院や管理棟がある「コンサベーションセンター」に向かい、そこにはすでにキーパーがお湯を入れたバケツに哺乳瓶を入れ、私たちが到着するのを待っていてくれました。「中に入るときは声をかけ、ゆっくりとした動作で向こうが逃げたら追う事はしないで、向こうから近寄ってくるまで待っている。」等、注意事項を聞いて、柵の外から見学することになった。中には4頭の生後4週間ほどの子供のプロングホーンがいた。目が大きく、掛け値なしに『かわいい』。子供達は逃げるどころか持っている哺乳瓶にむしゃぶりついてきて、吸引力が強いため哺乳瓶に空気が入らずミルクが出ないと、前足でキーパーに催促する姿はほんとにかわいかった。
ショーンが今度はワゴン車に乗り込む.。首を横に振り「早く乗れ」と催促されみんなで乗り込む。今度はオマハ郊外にあるヘンリードーリーZOOの分園で「ワイルドサファリ」に向かう。30分程で到着。遠くからアメリカの星条旗が見えていて、だんだん近づいてきた。その星条旗はサファリの入り口に立っていた。また、その旗に下にはブロンズのバイソンがいろいろなポーズで立っている。その大きさにはびっくり!入園料は10ドル、動物園の会員は5ドル、基本的に車で回る施設ですが、途中ハイイロオオカミのところは歩いて回る。とにかく広い広い。面積は440エーカー、エルク13頭・バイソン39頭・プロングホーン13頭・オジロジカ45頭・ガウル36(内44頭♂・繁殖は全て人工授精)その他多数の鳥類もいて、もっとゆっくり見たかったが時間が無くて残念。その他に病院、傷病鳥獣収容舎見学、病院の収容施設にプロングホーンが一頭収容されていた。良く見ると右目が飛び出している。たずねると「何かに驚いて激突した。もうすぐ目の手術をする。」と言う答えが返ってきた。こんなに広くてもぶつかる事があるのかと改めてびっくりする。2時間ほど見学して、今度はここから50分程郊外にあるリンカーンと言う町にある「子供動物園」に行く。
ここは日本平の半分ほどの面積で、ふれあいを中心にした動物園でした。ふれあいをしているのは、夏休みと言うこともあってか、みんな中学生や高校生のボランティアが中心で、フェレット・ウサギ・ハリネズミ・モルモットなどをテーブルの上でふれあいをしていた。変わったところではタランチュラやイグアナなどもふれあいに出すとの事でした。また、ポニーの乗馬も高校生が引き馬をしていた。乗馬はどこも有料で2ドル程度とっていました。2時間ほど見学して再びサファリに戻って、さっき見逃したところを見学。入り口の横に地域にすむ動物を展示した小獣舎があり、アライグマ、スカンク、ハナグマ、コウライキジ、ハクトウワシ、ヒメコンドル等が展示されていた。また、出口にはショップがあり、すでに閉園時間は過ぎていたので閉まっていたが見学することができた。お土産の商品展示の間に数カ所水槽で何種類ものヘビ、トカゲ、タランチュラ、ネズミ類などを飼育展示していた。
オマハ三日目の8月12日は、午前中ネコ科キュレーターのリズ女史の案内で猛獣舎中心に見学する。朝猛獣舎の前に着くとトラの搬出作業をしていた。輸送用の箱にトラを移し、麻酔覚醒剤を注射し扉を閉めると同時ぐらいにトラが立ち上がり、目覚めの速さにびっくりしていると、獣医は「大丈夫、計算どおり」と自身満々でした。ここヘンリードーリー動物園ではトラの繁殖に力を入れていて、猛獣舎に46部屋あるうち24部屋をトラが占めていて、17頭がアムールトラ、現在6頭の子供がいるとのことでした。獣舎の裏側も見学させてもらってびっくりしたことは、広いキーパー通路に動物の通路が張りめぐらしてあり「動物はどの部屋にも移動できる。」と言う説明でした。ここは「キャットコンプレックス」と呼ばれ非常に大きな建物で、室内からはガラス越しに、外は檻越しに見ることができ、もう一ヶ所上から柵もなしで見られるように工夫されていました。獣舎のほとんどは地下になっていて、地下通路で各放飼場を繋ぐ意味もあると思いましたが、冬はかなり寒くなるというので建物の補強や暖房効果も兼ねているように思いました。
午後は佐渡友君と姉妹都市友好協会会長のラリー氏が理事をしている「ネブラスカ・ヒューマン・ソサエティー」を見学に行く。この施設はペットの犬やネコの保護や里親探しをする、静岡では「動物愛護館」のような所でした。運営は全て寄付とボランティア活動との事でした。アメリカは動物に対する考え方はしっかりしていると思っていたのに、このような施設があるという事は、やはりペットを捨てる人もいるのかと少し驚きでした。しかし、そのシステムは驚くほどしっかりしたものでした。日本と根本的に違うのは、日本は行政が全面的に行っているのに対して、アメリカは、そのほとんどを市民の力で行っているところです。里親に出すときは全て避妊手術を施してから渡す。その手術も獣医のボランティアが行う。また、里親希望者には、その家族全員と(他に動物を飼っていればその動物も一緒に)譲渡希望動物がカウンセラーのカウンセリングを受け、相性がよければ渡す。中には何度も通ってお見合いをする人もいるとの事。また、動物のほうも大きく分けて三段階に分かれていて、第三段階はすぐにでも里親に出せる、良くなれた健康な動物。第二段階は健康だが人間にあまり慣れていない動物。第一段階はまだ施設に来たばかりで精神的に不安定であったり、健康に問題がある動物。一頭一頭治療や調教を施され、第一〜第三まで進んでもう大丈夫という個体のみ市民に渡すようにしているとの事でした。このような活動はアメリカではすでに100年程前から行われているとの事でした。歴史が違うことをひしひしと感じました。
夕方4時に武市さんと一四日のシモンズ園長以下動物園スタッフとのミーティングに向けての最終打ち合わせをする約束になっていたので、急遽ゲストハウスに戻る。武市さんはすでに家の前で待っていてくれて早速打ち合わせをし、約2時間かけてこちらの思いを通訳の武市さんに伝える。打ち合わせが終わったあと武市さんは持ってきたクーラーを開け「今晩はすき焼きをご馳走します。」といって台所に立ち調理をしてくれて、料理が完成すると「私はお邪魔でしょうから」と気をつかって帰られ、本当に恐縮でした。まさかアメリカのオマハまで来てすき焼きが食べられるとは夢にも思いませんでした。海野さん佐渡友君と三人で食べた本格オマハ牛のすき焼きの味は忘れられません。(おいしかった!)(ビールも)
次号へ続く
(鈴木 和明)