156号(2003年11月)6ページ
オランウータンのハンモック
新しく来園したキャンディ(メス)の傷の話と、お見合いのためジュン(オス)を当分の間展示できないということを前号でお知らせしましたが、おかげさまでキャンディの傷は薬の効果とジュンの働きもあり順調に回復に向かい、あと少しで治るところまできました。
さて、ジュンを放飼場に展示しない間、消防のホースを利用し作成した「ハンモック」をオリにつるす作業をすることにしました。これは他園でチンパンジーに使用しているのを見ておもしろいと思い、当園のオランウータンにもどうかと考えたのです。ホースを適当な長さに切って編みこむところまでは楽でしたが、ホースに穴を開けボルトにワッシャーをかましナットで締め付け、そのナットをオランウータンが回してはずさないように溶接で留めてもらいました。その結果、ハンモックは一人ではとても持ち上げることが出来ない程の重さになってしまいました。しかも、そのハンモックをつるすためのロープも直径が45mmもありかなりの重さ、年末の寒い中二人がかりで汗をかきかきやっとつるすことができました。
明けて正月2日、いよいよ使い初めです。ジュンを久しぶりに放飼場に出し、どんな反応をするかと思って見てみました。すると、ジュンは放飼場に出る扉のところまでは行くのですが、一ヵ月半程留守をした間に檻に見慣れない物がぶらさがっているのを見て、2、3回行きつ戻りつし、その後で意を決したかのように、しかし慎重に、壁伝いにおそるおそる出て行きました。1日目はハンモックには触れず、遊び道具としてその下に取り付けたタイヤをいたずらしていました。2日目になるとハンモックをゆする様子が見られましたが、乗るまでには至りませんでした。そして3日目には、大丈夫と確信したのかハンモックの上に乗って利用する姿を見ることができました。
皆さんが動物園にいらした時に、放飼場にオランウータンの姿が見つからない時は、ハンモックに注目してみて下さい。きっとハンモックの中にその姿を見ることができるでしょう。
(池ヶ谷 正志)