157号(2004年01月)1ページ
シマジロウの新たな旅立ち
3月16日、例年にない小春日和の午後、皆さんに「お散歩」で親しんでいただいたアムールトラ「シマジロウ」が新天地に旅立ちました。
シマジロウは、平成15年6月28日父親トシ、母親ナナの間に8番目の子供としてこの世に生を授かりました。この両親の間には今まで、10頭の子宝に恵まれましたが、9頭は発育不良や、子育ての放棄などで成育することが出来ませんでした。シマジロウも出生時1380gとやや小柄な体でしたが、担当の松永飼育員の希望もあり、何とか第二世をこの世に残したいとの願いで、その日の午後やむなく親から離し人工保育としました。
その背景には母親のナナが今一母親としての子育てに芽生えていないからでした。また、猛獣や霊長類は人工保育にすると、成長したとき他の自然で育った個体と同居する時、大変なリスクを負うことになります。なぜならば、群生活を基本としている彼らは、成長段間で野生動物としての生き方、種の存続等について両親や兄弟などから学んでいくのですが、人工保育の個体はそれらを学ぶことなく成長するのです。だから同居に向けて長期間お見合いをさせ互いを認識、理解させるのですが、それでもいざ同居してみると大きなトラブルが起きることがたたあります。自然飼育個体は人工保育個体が自分と同じ毛皮をまとった別の生き物としか映っていないのかもしれません。
そんなリスクを背負っている「シマジロウ」ですが、めでたく富士サファリパークに出園しました。富士サファリにはシマジロウと同じく昨年6月に生まれた2頭のトラがいます。彼らと最初は同居を試みることでしょう。この同居が成功すれば晴れてサファリゾーンに展示できます。
「シマジロウ」にとっては、これから大きな試練を迎えることになりますが、皆さん温かく見守っていて下さい。