157号(2004年01月)4ページ
動物脱出捕獲訓練実施
2月25日、年1回実施されている動物脱出捕獲訓練が行われました。今までに対象となった動物は、ライオン、トラ、クマ等でした。そして今年は、チンパンジーを対象として行いました。事前に、脱出したチンパンジーの役をする係員とチンパンジー担当飼育係員で、どういう手順で逃げ、又それをどう牽制するのか、細かい打ち合わせを何度も行い当日を迎えました。
13時40分、脱出開始。チンパンジー担当者は直ちに本部に通報、来園者の安全を確保し、チンパンジーが遠くへ行かないよう行動を開始しました。第一報を無線で傍受した飼育係は捕獣網や盾をトラックに積み込み現場に急行、直ちに現場付近を網で囲いチンパンジーの脱出を防ぐ準備をしました。それと同時に、本部からの通報により地元警察、猟友会、麻酔の準備をした獣医が現場に到着しました。獣医を乗せた車は捕獣網で囲った中に進入し、麻酔をうつ機会をねらいながら接近していきました。その間にチンパンジー役の係員は、あちらの木こちらの木と走りまわって登っては木を揺すって誇示行動をしたり、はたまた獣舎の檻を登ったり、獣医の乗った車に体当たりしボンネットに飛び乗り車を揺すったり、移動途中には置いてあった18Lの灯油を放り投げたりと、大奮闘。このパフォーマンスには、私達関係者を含め、捕獣網の外で成り行きを見守っていた来園者からも、「すごい!本物みたい」と感嘆の声があがっていました。ひとしきり暴れまわり疲れて動きが鈍くなったところを、すきを見て獣医が吹き矢にて麻酔注射(もちろん偽物)を発射し、見事命中。チンパンジーは 少しおとなしくなりましたが、まだ完全に動かなくなるまでには至らず、時々ピクピクと動く等、迫真の演技を続けました。そして、追加麻酔を実施、これにはたまらずチンパンジーも全く動かなくなり熟睡状態となりました。
そうしたところ予想外の事が起こりました。それまで檻の中で、「何やってんだろう」と声1つ出さず静かに訓練を見守っていた本物のチンパンジーが、偽物が全く動かなくなったとたんギャーギャーと大騒ぎを始めたのです。これは、本物のチンパンジーが偽者の迫真の演技に思わず引き込まれ、我を忘れ本物と間違い「仲間がやられてしまった」と思ったのでしょうか。
とにかく動かなくなった偽物を捕獲網に包み、獣舎に収容して、訓練は無事終了しました。チンパンジーの役をした係員は毛皮を脱いだら汗びっしょりになっている程の大熱演。ペットボトルの冷たいお茶をおいしそうに一気に飲み干しました。大変ご苦労様でした。