161号(2004年09月)4ページ
動物園実習だより 博物館実習を終えて
広島大学 佐合 麻未
私は幼い頃から動物園が好きで、その仕事にとても興味がありました。大学に入ってからも講義で動物園を訪れる機会が何度かあり、その度それまでは知らなかった動物園の機能や構造を知り、益々興味を持つようになりました。そのため博物館実習の実習先は迷うことなく動物園を希望しました。
実習はまず病院から始まりました。ここには市民の方々によって保護された野生動物や、体調の悪い飼育動物たちが収容されています。また解剖や手術もここで行われます。動物園の飼育個体は死亡すると解剖して死因を調べ、その結果を今後の飼育に生かすのだそうです。動物園というと動物の展示がメインであり、病院の存在はあまり知られていないようですが、動物の健康管理や飼育方法の充実のためになくてはならない施設であると感じました。実習は主に病院内にいる動物たちの世話で、餌やりと掃除が大半を占めます。病院内には様々な動物がいて、動物ごと食べる餌の種類も量も大きさも異なるので、それを覚えるのに苦労しました。病院には、獣医さんから薬を処方されている個体もおり、餌の中に薬を混ぜて与えたりもしました。こうした実習の合間に、ヘビの解剖や手術の見学もさせていただきました。普段では入ることのない病院で5日間も実習させていただき、とても貴重な体験となると同時に大変勉強になりました。
病院の次に担当した動物はゾウ・猛獣と類人猿、それにこども動物園の飼育実習を行いました。です。病院では来園者の方たちと接する機会がほとんどありませんでしたが、飼育実習中はイベントのお手伝い等もさせていただきました。実習が夏休み期間中ということもあって、家族で来園されている方たちが多く、イベントには多くのお子さんたちが参加してくれました。私がお手伝いしたのは、「ゾウにおやつのプレゼント」や「キリンに葉っぱのプレゼント」でしたが、どれも普段は離れたところからしか見られない動物を間近で見、そのにおいや息づかいを感じることができ、子供たちにとってとても貴重な体験になると思いました。動物と触れ合う機会が少なくなっている現在、動物園の果たす役割はとても大きいと感じました。
飼育の実習で実感したのは、生き物を相手にした仕事の大変さです。体調の悪い個体がいないか常に気を配るのはもちろん、個体間の関係等にも配慮して展示方法を決めなくてはならないし、病気や怪我の際の治療もとても大変です。動物園という特殊な環境で生活する彼らのストレスをいかに軽減するか、どのようにして処方された薬を飲ませるか等々・・飼育員の方たちは毎日試行錯誤を繰り返し、より良い飼育方法を模索されています。そのような苦労や努力を今回近くで見させていただき、とても勉強になりました。また飼育員の仕事は飼育だけに止まらず、来園者や市民の方たちに対する教育や動物園の広報等実に多岐にわたることを知りました。
11日間という短い実習期間ではありましたが、飼育員の方たちの仕事を間近で見、そのお手伝いをさせていただくことで、飼育員の方たちの動物に対する愛情を強く感じました。実習には体力が必要で、大変だったこともありますが、それ以上に素晴らしい経験をたくさんさせていただきました。お世話になった皆様、本当にありがとうございました。