でっきぶらし(News Paper)

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動物園実習だより 博物館実習を終えて

静岡大学教育学部 木村 由香里

博物館実習として、私は日本平動物園の管理担当にお世話になりました。11日間という短期間の実習でしたが、動物園に関していろんな視点から観察できる大変貴重な体験になりました。

恥ずかしながら、実は記憶にある中で2度しか動物園に訪れたことのなかった私にとって、動物園とは「なんとなく動物を見ながら通り過ぎてゆき、出口が見えたら終わり」というイメージがありました。動物園の仕事と言っても、獣医と飼育と事務の人たちがいるという程度の認識しかありませんでした。

このイメージをまず揺れ動かしたのが、「ガイドボランティア」によるツアーガイドでした。今回の実習をさせていただく前に、学校の授業の一環で、日本平動物園に来て、ガイドボランティアの方による園内案内を受けました。動物に関するいくつかのクイズを受けながら園内をまわったのですが、ただ動物を見るだけでなく、動物の生態や分布状況、絶滅に瀕した状況やその理由を聞くことで、動物に対する興味が湧いてきました。

実習中、ガイドボランティア養成のための研修に私も一度だけ参加させてもらいました。2人一組になって、1時間以上かけて、3種類の動物たちの個体識別や行動観察を行いました。グループごとの観察結果を発表し、比較してわかったことは、たとえ動物園で飼育されている動物たちであっても、野生の中で暮らしている時の習性が色濃く反映されていることや、人間それぞれ性格が違うように、動物もそれぞれ性格や行動パターンが全く違うということです。ごく単純なことなのですが、それらに気づくことで、私たちは動物をただなんとなく見るだけでは感じられない、動物それぞれに対する親近感や愛情が湧いてきて、話が盛り上がるきっかけになりました。

ガイドボランティアを募集し、支援していくのが管理担当の仕事のひとつであり、実際に体験させていただいたわけですが、ガイドボランティアの導入は今年で6年目ということで、まだまだ新しい取り組みといえると思います。ツアーガイドはいまだに平日すべてを網羅できていないということで、急ぎ足でボランティア養成がおこなわれ、ガイドボランティアのやる気と能力を借りて、少しでも多くの来園者に動物園を楽しんでもらいたいと考えているようですが、このような試行錯誤と実践、改善の苦労のもとに、動物園の教育が成り立っているのだなと感じることができました。「今あるものを最大限に利用する!」というふうにお世話になった方は口癖のようにおっしゃっていましたが、施設設備の改善だけではない、小さな工夫の積み重ねが、動物園の大きな発展につながってゆくのではないかと思いました。

他にも、私が主に関わらせていただいた「秋の動物園まつり」と「日本平エクササイZOO」でも、また違った角度から来園者へのアプローチが行われていました。秋の動物園まつりでは、普段は少し離れたところや、オリの外から見ているしかない動物たちに、来園者がえさを与えたりすることを通して、動物をより間近に感じられたり、その特徴を目で見てわかることができます。これは、動物を担当する飼育職員と、お客さんの応対をする管理職員という動物園の各担当が連携して行わない限り開催できないイベントです。

 「日本平エクササイZOO」は、来園の少ない中高年の方々をターゲットに、動物たちの動きや運動能力にちなんで、園内をウォーキングしながら設定されたスポットで運動をするという企画でした。私も看板づくりを手伝わせていただいたのですが、なかなか大変だと思いました。園内には、数多くのハンズオン展示や看板がどれも手作りで展示してあるのですが、色や配置、字の大きさなどによって、来た人が目に留めるか留めないかが決まってきます。今回の看板の場合も、字の大きさや配置がまずいと、とても見にくい看板になってしまうので、細心の注意を払いながら作業を進めました。このような地道な作業も、動物園の仕事には欠かせないことでした。

実習の日数を重ねるにつれ私が強く感じたのは、日本平動物園は地域にとても開かれた、関わる人々全てにとっての生涯学習の場だということです。まず、これまで述べてきたように動物園職員自身にとって常に学習の場であり、その職員の努力によって、来園者にもいろんな学習の機会があたえられます。ガイドボランティアとして参加している市民にとっても、自分の興味・関心を生かしつつ、さらに勉強をして、実践をし、その中で改善を加えるところは、仲間内で話し合って新たな取り組みをしていくという学習の場です。

小学生のボランティアも動物とのふれあい体験の手伝いを頑張ってやっていました。私のような大学の実習生にとっても、総合の時間を使って訪れる小中学生にとっても学習の場です。それから、私が実習をさせていただいている間に、近くの消防署の方々が火の用心の呼びかけのために動物園でイベントを開催したり、大学の先生方が動物園という場を借りて演奏会を開いたりと、動物園は地域の人たちにかなり活用されていました。動物園側が地域にその存在や役割をアピールすることで、地域の学校や企業や公共施設からいろんなアプローチがあり、地域の連携を深める架け橋となっていました。

その他にもここには書ききれないほど多くのことを私はこの実習を通して学ぶことができました。本当にありがとうございました。

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