211号(2013年04月)1ページ
春は引っ越しシーズン?
静岡は本格的な春をむかえました。山野では野鳥たちが子育て忙しいことでしょう。
日本平動物園では、ここ数年間続けられてきた再整備事業が一区切りをむかえました。
昭和44年(1969)の開園以来もうすぐ44年を数える日本平動物園では、各施設の老朽化が進んでいました。そこで個々の施設の単なる建て替えにとどまらず、園内全体の見直しを行い、「驚きと感動、さらには夢を与える動物園」をモットーに再整備計画を進めてきました。平成19年度から本格的工事が始まり、これまで、猛獣館299、フライングメガドーム、は虫類館、新レッサーパンダ館、新ペンギン館などの動物展示施設だけでなく新しいふれあい動物園、遊園地、多目的トイレ、、ビジターセンターの建設さらに、管理施設、エントランスゾーンの建替え、園路の整備が進んできました。そして平成24年度3月末に新オランウータン舎、草食獣舎等の完成をもって再整備はひとまず完成です。
3月中はこれら新しい施設への動物の引っ越しが忙しい月でした。
まず3月3日にベネットアカクビワラビーとアクシスジカの引っ越しがありました。東京の江戸川区自然動物園と埼玉こども動物自然公園から来園し、動物病院に仮住まいしていたベネットアカクビワラビーのメスの「ルッコラ」とオスの「ポンキチ」それに動物園の敷地の奥にある仮囲いにしばらく暮らしていたアクシスジカのメス1頭が新「草食獣舎」に移りました。ベネットアカクビワラビーたちは体格が小さく、比較的人に馴れている動物なのでそのまま捕まえて輸送用容器に入れて運んでおしまいでしたが、アクシスジカはそう簡単にいきません。追い回すと逃げ回りケガをする危険があるので、吹き矢で麻酔をかけて捕獲です。でも吹き矢の筒を持って近づくとぐるぐる囲いの中を走り回るのでなかなか当てるのに苦労しました。
続く3月4日はオランウータンのジュンとキャンディの移動日です。オランウータンの入る新しい施設は別の場所に新築されたので、いままでの類人猿舎からの引っ越しとなりました。これも麻酔をかけての移動です。しかし問題はオランウータンが頭のいい動物だということです。普段面倒をみている飼育担当者とは信頼関係で結ばれているので、もし捕獲作業に担当者が加わっていると、彼らは自分に嫌な思いをさせた人間たちの仲間として覚えていて、その後、担当飼育員のいうことを聞かなくなってしまう恐れがあります。そこで麻酔をかける作業中や、運んだあと麻酔が覚めてしばらくは、担当が顔をみせないようにしなければなりませんでした。
さらに続く3月5日は東京都立大島公園からバーバリシープ5頭が運ばれてきました。
大島公園では伊豆大島の溶岩地帯を生かしてつくられた広い放飼場でバーバリシープたちは飼育されています。広い施設での捕獲・輸送作戦だったので、大島公園職員の方々は大変だったと思います。到着したバーバリシープたちは幸い、パニックにもならず落ち着いた様子で新居の擬岩を登っていました。
そして3月3日に移動したものに加えて、3月11日に東山動物園からベネットアカクビワラビー1頭とアクシスジカ2頭が加わりました。
新オランウータン舎、草食獣舎は4月2日に正式にオープンします。改築中のバク舎も3月末には工事が終了し、マレーバクの親子が戻って来ているはずです。
その時には新しい施設に馴染んだ動物たちが日本平の地形を生かした立体的な新獣舎で皆さんの来園を待っています。
動物病院担当 菅野 展美