212号(2013年06月)2ページ
祝 グランドオープン!特別連載その1 猛獣館299編
日本平動物園は、「驚きと感動、そして夢を与える動物園」を目指し、平成19年度から6ヶ年かけて進めてきた再整備計画が終了し、平成25年4月2日、グランドオープンを迎えました。この間、園内の至る所で、工事が行われていてご来園の方々には、大変ご迷惑をお掛けいたしました。
当然のことながら、動物たちにも工事の音や振動、獣舎の移動などにより大変なストレスがありました。ハイエナは後肢を自咬するようになり動物病院に入院したり、チンパンジーは2週間も餌をほとんど食べなくなったり、ゾウは泥水を飛ばしたりと飼育担当者を散々悩ませてきましたが、ようやく一段落です。
再整備の第一弾として、平成21年3月29日にオープンした「猛獣館299」は、擬岩や擬木を利用し動物たちの生息環境を再現し、猛獣たちの迫力やしなやかさを間近に観察することができるため、園内でも一番の人気施設となりました。
猛獣館がオープンした平成22年度は、入園者も76万人と開園以来過去4番目の入園者数で前年度の166%増となり、ゴールデンウィークには、猛獣館に入る列が正門近くまで延び、お客様には1時間以上並んで頂きました。
現在、ロッシーとバニラがいるプールには、国内初のホッキョクグマ用水中トンネルがあり泳ぐ姿を真下から見ることができます。人気者の2頭は、非常にサービス精神旺盛でよくガラス面近くを泳いでくれています。ホッキョクグマの足の裏はどうなっているか、ホッキョクグマは水中でどんな動きを見せてくれるかなどを観察できる絶好のポイントです。
また、時々雪の上でゴロゴロと遊ぶロッシーの姿を観ることができますが、これは、1日に10tの雪を降らす能力の降雪機で作った雪のおかげです。しかし、実際は電気代がすごくかかるので、残念ながらたまにしか降らすことができません。やはり、静岡で雪を降らすことは大変ですね。
お客様は、大人気のゴマフアザラシの円柱トンネルに釘づけですが、その先に食物連鎖を理解していただくため、捕食をテーマとしたアザラシプールのガラス面があります。この展示方法は、当初、飼育員の中でもストレスが多すぎると反対もありましたが、ガラスは後からでも塞ぐことができるからと、国内初の捕食をテーマとした展示を行いました。最初の2週間ほどは、ホッキョクグマが見えるガラス面には、まったく近づかなかったのですが、安全だとわかってくるとスイスイと横切るようになりました。運が良ければ、ホッキョクグマとゴマフアザラシの2ショットを撮ることができます。
ネコ科ゾーンでは、昔からの展示コンセプトである「比較展示」を取り入れ、アムールトラ、ライオン、ピューマ、ジャガーの体格や生態系の違い、その高い能力や迫力、しなやかさなどを比較しながら色々な角度から見て頂いています。
アムールトラは、暑い日にはプールに肩まで浸っていますが、本当に気持ちよさそうです。夏場の絶好の撮影ポイントです、ぜひ、アムールトラとの2ショットを狙ってみてください。
ライオン展示場では、新しい試みとしてミーアキャットがすぐ隣で日光浴をしている姿がご覧になれます。こちらもアフリカでは捕食関係になり、見張り役のミーアキャットが100m先にライオンを見つけると、すぐ、巣穴に逃げ込んでしまうと言われますが、ここではすっかり慣れてしまい、2,3メートル先に寝ているライオンをフェンス越しにじっと覗き込んでいるミーアキャットの姿を観ることができます。
ピューマ展示場は、北米の山岳地帯の岩場をイメージして造っています。この岩場は、飼育担当者がピューマの優れたジャンプ力を見てもらおうと考えて、岩壁の高さや幅などを擬岩業者さんに現場で細かく打合せして造ったものです。ピューマのかっこいいジャンプ姿をぜひ見てください。
ジャガー展示場は、熱帯雨林のジャングルを修景し、自由に樹の上を歩きまわるようにしていて、頭の上のジャガーとの距離の近さに驚かされます。頭の上は、フェンスなので、ジャガーが歩き回ると上から砂や体毛、運が良ければオシッコも降ってくることがあります。私は、一度テレビ局の撮影中、おしゃべりに気を取られている時、音もなく忍び寄るジャガーに真上からオシッコをかけられました。油断大敵です、ジャガーの下に入るときは、常に狙われていることを意識してください。
見どころ満載の「猛獣館299」、何度でも足を運んで、動物たちの色々な行動や表情を楽しんでください。
飼育担当 柿島 安博