267号(2022年08月)6ページ
「ありがとうとごめんね」
1歳でインドからはるばるやって来たシャンティ。たくさんの人に「ゾウ」を教えてくれてありがとう。
シャンティを担当した飼育係は総勢14名以上。たくさんの飼育係や獣医師、そしてスタッフを育ててくれてありがとう。
育休を取っていた私との挨拶を、しっかり覚えていてくれたシャンティ。私のような若造の号令に応えてくれてありがとう。
最後のトレーニングも、いつも通りこなしたシャンティ。肢の痛みと体力は限界だっただろうに、最後まで頑張ってくれてありがとう。何もしてあげられなくてごめんね。
5月4日の朝、ゾウ舎に向かう私の頭に浮かんだのは、なぜか横になっているシャンティの姿でした。きっと、「誰か早く来て!」と助けを求めていたのでしょうね。気づくのが遅くなってごめんね。
日本平で過ごした約52年間は幸せでしたか?お世辞にも恵まれた環境とは言えない獣舎だったけど、持ち前の生命力でここまで生きてくれて本当にありがとう。
日本一、同じ時間を共に過ごしたゾウ、ダンボとシャンティ。2頭には、ここには書ききれないほどたくさんのエピソードや物語があるはずです。書籍や絵本、石碑やオブジェなど、どんな形であれ、2頭の物語を1つにまとめて後世へ残せたら素敵だなと、個人的に思っています。
もちろん、残されたダンボの物語はまだまだ続きます。シャンティを失った悲しみ・喪失感は計り知れませんが、少しでもダンボの気が紛れるように、残りの「象生」を幸せに暮らせるように、みんなでダンボと向き合い、取り組んでいきたいと思います。
(横山 卓志)