27号(1982年06月)3ページ
野鳥 〜サギ類の繁殖と夏鳥〜
(渡辺明夫)
今年のサギ類の繁殖について、当初心配されましたが、一応例年どおりコサギ、ゴイサギ、そして昨年に続いてアオサギが繁殖しています。
コロニーの営巣数については、はっきりしたデータがないので、いちがいには言えませんが、昨年より少し数が少ないように見受けられます。この傾向は、ゴイサギよりコサギの方に強く現れています。もっとも、昨年の繁殖数がコロニーの広さから言って、多少オーバー気味であったかも知れませんが、南東側斜面の利用度は確実に少なくなってきています。けれども今年はアオサギの繁殖が、昨年の1ペアから2ペアに増えました。昨年のペアにはすでに4羽のひなが大きく育っています。もう一方のペアも繁殖が確実となりました。
静岡県内で、アオサギの繁殖が確認されているのは、日本平動物園の池付近だけですので、その重要性について認識を新たに感じています。
動物園と、その周辺及び裏山の今年も夏鳥が渡ってきました。鳴き声(さえずり)で代表的なものはオオルリ、キビタキ、サンコウチョウです。しかし、ここ数年その声もあまり聞かれなくなってきています。渡ってきた当初だけは盛んに鳴き、その後繁殖地を求めて通過して行く個体もあり、あるいはこの場所に居つき、例年繁殖する個体もあります。
通過して行く夏鳥では、ホトトギスの仲間のカッコウ・ホトトギス・ジューイチ・ツツドリ・ウグイスの仲間のオオヨシキリ、エゾムシクイ・センダイムシクイ等があります。この他、シーズンを通じて夜聞かれる鳥の鳴き声は、ヨタカ・アオバズクがあります。その他、上空で確実に姿を見られる鳥は、ツバメ・コシアカツバメがあります。コシアカツバメは、例年ゾウ舎で営巣していましたが、秋になると南に渡ってゆくので、その巣をスズメに利用されてしまいました。翌年春になって渡ってきた時も、新しく巣を作りましたが、結局スズメに乗っ取られてしまいました。動物園内で、コシアカツバメが営巣しそうな建物は、ハ虫類館が残っていますが、まだ営巣の様子は見られていません。ちょっとした『はり』の様な物を取り付けてやれば、巣作りを始めるかもしれません。
ひとつひとつ工夫して、野鳥だけでなく、様々な生物がくらしやすい環境を保ち、改善していくことも、動物園として取り組んでいくことの一つだと考えています。