61号(1988年01月)8ページ
動物の食べ物 熱帯鳥類館「ワライカワセミ」
隣には、アオショウビンの親玉のようなワライカワセミが飼育されています。無論、同じ仲間です。片や東南アジアが生息地なら、こちらはオーストラリアという訳です。
食べるものは、似て非なりというところでしょうか。アオショウビンは魚類以外にそう嗜好性がないのに対し、逆にワライカワセミは魚類はそう好まず、小動物を主食にしています。つまり、ヘビやトカゲ、ネズミを主食にしているのです。顔を見ればけっこ愛らしく、猛禽のイメージを探れるものではありません。食べ物とイメージの間にこれ程落差のある鳥も珍しいのではないでしょうか。
そういえば鳴き声もそうです。確かに映像で紹介される時の彼らの鳴き声には素晴らしものがあります。自然の非常に美しい雰囲気を伝えてくれます。それはあくまでも自然界での話です。まだ入ったばかりで動物病院で検疫されていた時は、担当者でなくとも悲鳴をあげたくらいです。比較的大型の鳥類が、種名に由来する鳴き声を、限られたスペースの室内の中で張り上げるのです。頭にガンガン響くだけで、一片の優雅さもありませんでした。動物園に3大狂奏者があるとすれば、充分にそれに入る資格があります。
このワライカワセミ、昨年は産卵し2世誕生の期待を抱かせましたが、残念ながら夢に終わりました。ここで紹介しそこなった、育雛時にはメス親をヒナと共に木のほらに閉じ込めてしまう、というオオサイチョウも同様の結果に終わりました。
いつしか、ここでそれらの育雛の様子を伝えられることを念じつつ、苦手な熱帯鳥類の食べ物の紹介を終わらせていただきます。
(松下憲行)