でっきぶらし(News Paper)

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スポットガイドだより

≪11月20日 アメリカバイソン≫

 前日の台風並みの激しい天気が、嘘の様に好天となった十一月二十日・十三時三十分、アメリカバイソンのZOOスポットガイドを開催しました。
 前述の様に非常に天候が良く、とても暖かい風が拭く中、いつもボ〜っとしている様に見える三頭のバイソン達は更にボ〜っとして見え、微笑を誘う程でした。
 彼らアメリカバイソンはいわゆる【野牛】です。当たり前の事実です。しかし、ごくたまにバイソンを【野牛】・・・〈牛〉だと思っていない人達がいるので念の為。動物好きな方々には信じられない事かも知れませんが、私達動物関係の仕事をしている人間や、動物に関心がある方々が唖然とするくらい、世の中は混沌に満ちているのです(蛇足ですが他にも・・・ペンギンを鳥だと思っていなかったり、ペンギンが泳ぐことを知らない人・キリンを見て大きなウマだと言う人・ライオンやトラがネコ科である事を成人になってから知って驚く人〜等います。実話です。)
 さて、この〈牛〉・・・【野牛】であるアメリカバイソン、約二百年前までは何百頭もアメリカの大平原に生息していました。彼らは季節の変わり目には大移動をし、その大規模な群は話半分で考えたとしても、全ての個体が移動し終わるのに数日を要したそうです。しかしアメリカ開拓時代が始まり、更に大平原に鉄道が敷かれる様になると、その数は急激に減少していきました。その原因のひとつは(環境の変化もさる事ながら)、人間の直接の行為・・・・・・他の国からの開拓民や移民・観光者の《遊び》が大きかった様です。
 この世界にはスポーツハンティングやレジャーハンティングと呼ばれる娯楽がありますが、他の国々からアメリカ大陸にやって来た人々が行った《遊び》がまさにこれで、主に『面白い』と言う動機で、銃器を用いてバイソンを虐殺したのです。特に、汽車の屋根の上や窓・汽車に特別に設けられた展望台等からドッカンドッカン銃をぶっ放して殺すのが大層流行ったらしく、ワクワクしながら、大騒ぎをしながら、汽車に銃を持ち込んだ人々が沢山いたと記録されており、この為の一種の観光ツアーまで存在したそうです。
 今回のスポットガイドでは担当者が、そうした話も、ただ口頭だけではなく、紙芝居?形式で説明しました。参加者の皆さんも、目の前の三頭のアメリカバイソン達の御先祖にそんな歴史がある事に感慨深いものがあった様です。
 現在、アメリカバイソンは各地で手厚い保護を受け、少しずつですが数を増やしています。けれども往時の壮大なスケールには二度と戻ることはありません。それはアメリカバイソンの悲惨な歴史そのものであり、同時に、一部の人類が地球に刻みつけた、黒い歴史なのです。
うららかと呼んでいい暖かい風の中・・・そんな言葉が一瞬、頭をよぎりました。

≪12月18日 レッサーパンダ≫

 十二月十八日・十三時三十分、レッサーパンダのスポットガイドを行いました。
 当園には四頭のレッサーっパンダが飼育されています。そして、ご存知の方も多い事かと思いますが、この四頭は、あの【立つレッサーパンダ】として話題になった風太の血族です。ご存知ではない方の為に補足すれば、風太は当園・日本平動物園から千葉市動物園に旅立って行った個体です。素晴らしい姿勢の立ち姿で彼は一世を風靡しましたが、本来、レッサーパンダは時々立つ動物であり、しかも当園のレッサーパンダは良く立つ個体が歴代輩出されるので、騒ぎ?になった時、『何故、こんな事が話題になるんだろう?』と関係者一同、首を捻ったのを覚えています。
 さて、今回のスポットガイド、この四頭のうち三頭(♂一頭・♀二頭)が紹介され、担当者がレッサーパンダの獣舎放飼場に直接入って、彼らを足元に説明・解説を行ったのですが、三頭揃って立ち上がり、担当者にまとわりつき、まるで担当者の両足に何かの果物が実っている様にぶら下がったりしました。・・・・・・が、実はこれには秘訣が存在しました。
 担当者の手に、彼らの大好物のリンゴがあり、小さくカットしたそれを少しずつ与えながら説明・解説を行っていたのです。ですから皆で『リンゴくれ!リンゴくれ!リンゴくれ!』と抱きつかんばかりに迫っていたのでした。その為、担当者は満足に歩く事もできず、それでも異動しなければならない時は、三頭をズルズル引きずる様にするしか無く、スポットガイド参加者の皆さんに暖かい笑いを生んでいました。
 余談ですが、この食い意地がはった?レッサーパンダ、主食はジャイアントパンダと同じ笹、つまり竹の葉っぱです。この笹は、レッサーパンダを飼育している他の動物園等では入手に苦労している所も多い様ですが、当園では新鮮な笹が全て無料で入手できます。それは園内敷地に、竹がどっさりと生えているからです(この竹はアジアゾウ等、他の動物にも与えます)。
ところで皆さん、どうしてレッサーパンダの体毛が、背中は茶色(赤褐色)、おなかと四肢が黒だと思いますか?それは、レッサーパンダが一日の多くの時間を樹上で過ごす事に関係があるそうです。
 レッサーパンダにも沢山の敵がいます。一説によると、空から来る敵に対しては、樹上にいる時、背中が茶系の色だと樹の下の地面の色に紛れて判りにくく・・・そしてお腹や手足が黒いと、下から来る敵からは樹の陰に同化して見えにくい・・・つまり保護色になっている可能性があるそうです。
そんな話等を、担当者は、彼らを両足に実った果物のようにぶら下げながら、一生懸命説明しました。
 シンプルでしたが、とても面白いスポットガイドになったと思います。

ZOOスポットガイド班 長谷川 裕

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