でっきぶらし(News Paper)

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動物病院てんやわんや〜人工哺育抄〜◎ヒョウ、ツチブタの出産

 事の始まりはヒョウから。代番者が寝部屋の隅、溝のところで冷たくなっているヒョウの赤ん坊を発見し、慌てて獣医に通報。「もう駄目かもしれない。」が開口一番に出たそうです。それはそうです。生まれたばかりの赤ん坊が、体が冷えきってあえぐ力もなかったのです。誰だって駄目だと思うでしょう。
 しかし、保温に努めた結果、徐々に元気を回復。ミルクも15cc飲んで周囲を安堵の空気で包んでくれました。ヒョウの人工哺育は何度か経験しているものの、何といっても開園以来の動物であった、今は亡きゴローの忘れ形見、しっかり育てあげたいとの素直な素朴な気持ちでいっぱいだったのです。
 そんな喜びに浸る間もなく、その日の夕方には夜行性館において、待望のツチブタの出産が始まっていました。そしてそれも結果として人工哺育にせざるを得ませんでした。 まだ胎盤もできらず、ヘソの緒がついたままの状態でありながら、親はうろうろと落ち着かず、子を引きずってしまう有様だったのです。放置すれば危ないと判断、子はすぐ様取り上げられたのはいうまでもありません。
 これまた、後が大変。何せ日本での経験はゼロ。となると外国の文献に頼るしかありません。それがまた何とも悲壮な話。2ヶ月間自力では飲まなかった為に、ミルクは流し込んで与えたというのです。しかも、元来土の中に潜って生きている動物、前足の強さは想像以上のものでした。ミルクを2人掛かりで飲ませたなんて前代未聞。つまり1人はタオルで赤ん坊を包んで前足の抵抗を押さえ、その間にもう1人がミルクを流し込むように飲ませた、という訳です。

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